真空管式 カーオーディオ プリアンプの制作 2009.12.30 (2010.1.5追記)

 真空管式カーオーディオを使用し始めたのが、2005年の10月でしたので今年(2009年)で4年が過ぎたことになります。通勤時間が短いため、1日あたりの稼働時間は30分程度ですが、通勤や市内の外出に毎日のように使用しております。電源の改造を計画しましたが、なかなかうまくいかず、中断していますが、制作当初の電源部は細かい改善を加えながら問題なく稼働しております。
 本体は問題ないのですが、最近パワーアンプの上の段に設置していた中古のカッセトチューナーが故障してしまいました。下から真空管に熱せられ続けたのも原因かもしれません。最近車内ではFMラジオかiPodしか聞きません。最新型のiPod nanoの仕様を見たらFMラジオが付いていたたのでさっそく購入しましたところ、イヤホン利用のアンテナをつければ車内でも十分に利用できることがわかりました。そこで今回は故障したカセットデッキのスペースを利用して真空管式のプリアンプを設置し、iPod出力からスピーカーまで全て真空管増幅としてみようと考えました。

回 路

 使用する真空管は、パワーアンプの初段と同じく、耐震性を考慮して5670Wを使用しました。「W」は耐震型を示す記号だそうですので、今回の用途にぴったりです。一般的な双三極管に比較して背が低く、電極と管の底面の距離が短くなっており、見るからに振動に対して強そうです。「JAN」の記号も付いていますので、本来は米軍の戦車か戦闘機にでも乗せられる真空管だったのでしょうが、平和利用をさせていただきます。
 8Ω負荷で7W出力のメインアンプのゲインが3.5倍ですので、最大出力時にパワーアンプ入力電圧は2.138Vとなっている計算です。また、以前測定したiPod nanoのライン出力の最大出力電圧は、560mVでしたので、最大出力を得るためにはプリアンプのゲインは最低約3.8倍は必要になる計算です。実際に狭い車内で7Wもの出力を出したら大変なやかましさになってしまいますが、録音レベルの低いソースのことも考慮して少し余裕をとり今回のプリアンプは約5倍の利得と設定しました。5倍程度の利得であれば、5670の単段増幅で十分可能ですので、単段P-G帰還の回路を選択しました。回路図は下図の通りです。電源は、メインアンプに来ているB電源の269V・DCとヒータ電源の6.3V・DCを分岐して使用します。入力はiPodを基本としますが、別の機器も接続可能にするよう、入力切り替えスイッチを設けています。入力端子はiPod用にRCAジャック、もう1系統はステレオミニジャックにしました。


お世話になったカセットチューナー

設置前の状態

JAN-5670W
回路図
ケースの制作

 今回は1DINサイズの箱を制作します。2mm厚のアルミ板をサイドパネルと真空管を保持するパネルに使用し、底板に1.2mm、その他には1mm厚のアルミ板を使用しました。所定の大きさにカットし、9.2mm*9.2mmのアルミアングルで固定しました。ケースの制作が今回のプリアンプ制作時間の9割以上を占めていると思います。部品は平ラグに固定しています。また振動対策として、ネジの緩み止め剤(ロックタイト242)というものを使用しました。ネジを固着してくれますが、あとでとりはずすことは可能なものです。4年前に制作した車載用パワーアンプでも使用していますが、今のところネジの緩みは見られません。
 下段のパワーアンプからの熱を逃がすことを考慮し、正面から見て左側の部分は下面のパネルを切り欠き、下段の熱を逃がしやすい設計としてあります。また、ツマミの位置は下段のアンプに合わせ、黒のパンチングメタルもパワーアンプと統一してあります。

ケースの仮組ができた段階

配線が終了した状態

ネジの緩み止め剤
仮電源での測定

 車に乗せてしまうと測定が難しいので、仮電源を組んで特性を測定しておきました。周波数特性は100kHzで-1.58dBであり、特に問題ありません。歪率も、0.1%を切っていますので、これでよいとします。利得は4.8倍になっています。チャンネル間クロストークは1kHzで-87dB、10kHzで-68dB、100kHzで-51dBとなっています。左右のチャンネルで一本の真空管を共有しているため、高域で大きくなっています。


車内への組み込み

 組み込みが完了したので、試聴してみました。4.8倍のゲインでちょうどよい音量です。通常の音量でボリウムが12時から13時くらいの位置で使用しています。前面にあるミニジャックは、他の機器を使用する際のためのものです。また、iPodは純正のオーディオ接続用ケーブルを用いてドック端子からライン出力を取り出しています。以前使用していたオペアンプ利用のプリアンプにつけていた充電機能は新しいiPodでは機能しないので取り付けてありませんが、最近のiPodは電池の持続時間が長いので特に不便は感じません。



iPodへのアンテナの接続


 車内の配線をするついでに、カーオーディオの後ろにあった車のアンテナの端子からコードを延長し、iPodのイヤホン端子に接続してみました。片方が断線してしまったイヤホンのコードを利用して、片チャンネルのプラス側にアンテナ線を、アース側にアースを接続してみました。もう片方はオープンのままにしてあります。純正のiPodのオーディオ接続コードは色が白くて車内では目立つので、カー用品店で黒色の配線チューブを購入し、アンテナ配線とともにまとめてあります。室内にワイヤーを伸ばしていた時と同等の感度ですが、見た目がスマートになりました。

iPod充電の試み(2010.1.5)

 最初に購入した第1世代のiPodでは、ドック端子のUSB+に5Vを供給すれば充電が可能で可能でした。しかし、その後購入した第3世代iPod nanoではできなくなり、今回購入した第5世代のiPod nanoでもできません。さらに第5世代ではドック端子からのライン出力も切り替わらないようになってしまいました。仕方なくドック端子からのオーディオ接続のために購入したiPod純正のオーディオ接続キットには100V・ACからUSBを用いてiPodが充電できるアダプタが付いていました。100円ショップで購入したUSB延長ケーブルを途中で切断して電圧を測定できるように改造し、iPodを接続した状態で電源アダプタから出ているUSBの各端子の電圧を測定してみると以下の通りでした。無負荷の場合は、2番、3番の電圧が0.2Vくらい高くなっていました。
ピン番号(信号名) 線の色 電圧
1 (Vbus) 5V
2 (D-) 2.5V
3 (D+) 1.8V
4 (GND) 0V
 そこで、車内の12V電源を用いて、USBの各端子に上の表と同じ電圧を供給する装置を制作してみたところ、充電ができることを確認しました。ただし、あくまで「やってみたらできた」というものですので、充電に際しての安全性はまだ十分に確認できているわけではありません。いちおう、フル充電になるとiPodの画面が「充電済み」に切り替わることは確認しております。
 いろいろwebで調べてみると、同様の試みをされている方がおられました。2番と3番のピンは電圧の差を設けず両方とも2.5Vとしても充電できるようです。(私も試験して大丈夫でした。)

 回路は単純に三端子レギュレータ7805を用いたものです。USB2.0の規格では電流がMAX500mAであるとのことですので、レギュレータの手前に10Ωの抵抗を設け、最大電流時の7805の発熱を抑えています。ケースはタカチのYM-90というアルミ製のものを用いました。W=90H=20D=60というサイズで、車のコンソールボックスの中でも場所をとりません。アルミケースに7805をネジ止めして放熱をおこなっています。

2010.1.9回路修正



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