TAMURA TpC-2をMCカートリッジ用昇圧トランスとして利用する(2022.10.30)

 MCカートリッジ(DENON DL-103)を使用するための昇圧トランスにネットオークションで購入したTAMUTRA TpC-2を使用してみたレポートです。先日製作したフォ ノイコライザ付きプリアンプに接続して使用します。今までは既製品の昇圧トランスを使用してきましたが、昇圧比が1:20あり、phono入 力に切り替えた場合の音量が他のソースと比べ て大きくなりす ぎるという問題がありました。TpC-2はこれよりも昇圧比が低いので、改善できると考えて使用してみました。

TAMURA TpC-2 について

 カタログによれば、TpC-2は「ラインアウトプットトランス」 となっています。1次側20Ω、2次側が600Ωです。昇圧比はインピーダンス比の平方根ですので、約1:5.5となります。音が大きくなりすぎる問題は、こ れで解決できそうです。また、NFB用の巻き線もついていますが、これは使用しません。基板に取り付けるタイプで、購入したものは中古品だったため足がや や短 かったですが、穴あき基板に取り付けるのには問題はありませんでした。基板にはM2のボルトで固定するようになっています。


周波数特性を測定してみる

 下記の回路を組み、トランスの周波数特性を測定しました。回路図のRの値を変化させて測定してみました。

 トランスの2次側に何もつながずにフォノイコライザに接続すると、2次側の負荷は初段真空管のグリッド抵抗である47kΩになるため、まずはRを 47kΩとして測定しました。200kHzを超えたあたりに3dBほどのピークが見られますが、可聴周波数帯域ではほとんどフラットで優れた周波数特性で あることがわかります。

 トランスの周波数特性グラフで高域にピークがある場合には、何らかの共振が原因ではないかと考えられます。そこで、負荷抵抗をより低くすればピーク を抑えられると考えました。DL-103のカタログによれば、カートリッジの負荷抵抗は100Ω以上とされていますので、2次側に3kΩを接続して測定し てみました。カートリッジ側から見てちょうど100Ω負荷になる計算です。

 ピークは少しありますが、80kHzあたりで0.66dBに収まっています。しかしながら、カタログの「100Ω以上」という文言が気になります。 最低限ぎりぎりで使用するのは何かデメリットがあるのではないかと考え、もう少し負荷を軽く して2次側に5.1kΩを接続してみました。1次側から見ると170Ωの負荷に相当します。

 この場合のピークの高さは100kHzで1.01dBでした。この値を採用して製作することにしました。

既製品トランスの周波数特性

 参考までに、以前から使用してきた既製品の周波数特性は47kΩ負荷の場合下記の通りでした。60kHzで2.11dBのピークがあり、さらに高域 にピークが2か所見られます。TpC-2のほうが優秀に感じられます。このトランスも2次側の負荷抵抗を低くすることで、ピークを低くできると思います。

回路

 フォノイコライザに接続して場合のトランスから見た2次側の負荷を5.1kΩ程度とするために、トランスの2次側には5.6kΩの抵抗を接続し ました。アンプの入力抵抗47kΩと並列接続として計算して約5kΩとなる計算です。


ケースの製作   

 タカチのCU-13Nというケースに組み込みました。寸法は外寸でW120mm*H75mm*D140mmです。中央に仕切り板を取り付け、左右にトラン スを分けて配置しました。


使用してみて

 他のソースと比較してレベル差が少なくなり、使いやすい音量になりました。周波数特性も向上したはずですが、その点はよくわかりません。接続する RCAケーブルの引き回し方により、電源からのハム音を拾います。壁にケーブルが近いと、壁の中のAC配線からのハムを拾うようです。壁から離し、他の ACコードを遠くに配置することで、ハム音も気にならなくなりました。


アース修正(2022.11.5)

 最初は入力側シールドのみアース(シャーシに接続)に接続し、マイナス端子をアースから浮かせていましたが、入力のコードに体を近づけるとハム音が 大きくなる現象がありました。入力側のマイナス端子を左右チャンネルともアースに接続したところ、体を近づけることによるハム音は少なくなりました。回路 図は修正したものを掲載しています。


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