カーオーディオ用スピーカーネットワークの製作(2021.2.7)

 現在使用している私の車(1989年式いすゞピアッツァ)のカーオーディオは、元か らついていたテクニクス製スピーカーを真空管アンプで 駆動しています。スピーカーは前後左右 全部で4か所にありますが、ここ数年は前側のドアについている2か所だけを使用してきました。ドアについているスピーカーは低音域が苦手なようで、低周波発振器を接続して 音を出してみると、130Hzあたりで不快な共鳴音がしました。(30年以上前の製品なの で、経年変化も大きいと思います。)接続を変えて試してみると、後ろ側のスピーカーは、前側のスピーカーよりは低音域がよく出るようです。ただ し、後ろ側からのみ音がするのは運転していて不自然です。せめて中高音は前側のスピーカーから出てほしいところです。

 そこで、ネットワーク回路で低音を後ろ側、中音域以上を前側のスピーカーに振り分けてみようと思いました。アンプも分けて4チャンネル化す ることも検討しましたが、消費電力が現状より増えるとバッテリー電圧が低下し、インバーターが警告音を出す頻度が高くなるので、アンプはそ のままにしてスピーカーネットワーク回路で対応することにしました。特殊な事例ですので、あまり参考にならないかもしれませんが、興味のある 方はご覧ください。

回路について

 前側のスピーカーに130Hzの信号が十分減衰して伝わるようにするために、クロスオーバー周波数は約600Hzにし、 12dB/octの ネットワークを採用しました。回路定数の決定は、このページの計算式によります。スピーカユニットのインピーダンスとクロスオーバー周波数が決 まれば、コイルとコンデンサの値を決めることができます。これだけでは面白くないので、もう少し勉強する意味で、自分で計算式を立ててエクセ ルで計算してみました。計算式はこちら。(2022.8.10   わかりやすい計算式に変更。古い計算式はこちら)この式をもと にエクセルでグラフを描いてみると、コンデンサ、コイルの値に誤差がある と、高音と低音の合計出力の周波数特性が微妙にうねることがわかります。しかしながら、コイルやコンデンサの値を10%変化させても1dB以 下のうねりなので、気にしないことにします。また、スピーカーのインピーダンスも変化させてみると同様に周波数特性が変化します。低 音用と高音用を共に3Ωとした場合、クロスオーバー周波数付近で1dB近いディップが生じました。しかしながら、スピーカー自体の周波数特性 も平坦ではありませんので、これも気にしないことにしました。なお、エクセルの計算では、アンプの出力インピーダンスは、使用しているアンプに合わせて1.739Ωとして あります。

回路図


LPF、HPFの周波数特性シミュレーション


LPF出力とHPF出力の合成周波数特性(シミュレーション)

コンデンサ51.7μF(+10%)、コイル1.35mH(-10%)とした場合
(シミュレーション)

スピーカーのインピーダンスを3Ωとした場合(高音用、低音用とも)
(シミュレーション)

ケースの製作

 コストとスペースの関係から、コイルはコア付きコイルを採用し、コンデンサには、無極性電解コンデ ンサを使用しました。コイルは基板に非 磁性体のアルミ製のボルトとナットで固定しています。念のためインダクタンスを測定してみましたが、ボルトの有無でインダクタンスに変化はありませんでした。ケースは、タ カチのプラスチックケースTW-13-5-18Bを使用しました。ダッシュボードの物入れにちょうど納まりました。


ケース

基板

使用してみての感想

 休日に市内をドライブしながら新しいシステムの試聴をしてみました。低音は確かに豊かになった気がします。音像定位については、後方から低音が聞こ えるために以前とは異なりますが、そんなに違和感はありません。ただ、古いスピーカーなので、スピーカーのエッジが痛んでいることがわかりました。エッジ 交換をすればさらに良い音になると思いますので、近いうちに交換してみようと思います。

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