126章  先陣を駆ける者


 

 カオシュンが陥落して以降、台湾に残っていたザフトは孤立したまま文字通りの全滅に向けてのカウントダウンを数えており、台湾の南端、オーラン岬から南湾といった僅かな地域に追い詰められてしまっている。
 既に攻略戦そのものは大西洋連邦と極東連合の陸軍部隊によって行われており、空軍と少数の洋上艦隊がこれを支援している。既にザフトには脱出するための艦艇も航空機も無く、水陸両用MSも残ってはいない。この為に連合軍も上陸作戦の時のような大部隊は流石に展開させてはいない。
 この残存部隊は既に棄兵として扱われており、本国にも各地の指揮官にもこれを救出しようとする動きは無かった。だが、この残存部隊を救出しようとする動きがなかったわけではない。プラント本国では少数のナスカ級と高速輸送艦に宇宙往還機を満載し、兵員だけでも回収しようとする計画が考案されていたのだが、先のウィリアムスの攻撃で力を使い果たしてしまい、余力無しという事で立ち消えてしまっている。
 これに対して地上軍が考えたのはボスゴロフ級潜水母艦を多数投入し、一度に生き残った兵員を救出して脱出してくるというものだ。陽動の為に何処かに牽制攻撃を仕掛けるのが理想だが、それだけの余力は無い。
 この作戦はジュディ・アンヌマリー隊長とグリアノス・エディン隊長が共同で立案したもので、実現は不可能ではなかったのだが、クルーゼが難色を示していた。ただでさえ苦しい台所事情から貴重な部隊を割けというのだ。しかも成功する可能性は低く、仮に成功しても得られるものは大量の負傷者とボロボロの敗残兵である。こんなお荷物を抱え込むだけの作戦を了承しろというのはクルーゼには到底受け入れられない事だったのだが、ジュディとグリアノスは強硬にクルーゼに迫る事でこれを飲ませていた。
 だが、与えられた戦力はお世辞にも満足できる物ではなかった。使えるのは潜水母艦が必要最低限の数だけで、足りない分は潜水艦で牽引する輸送筒で補う事になる。護衛のMSも数が足りないのは明らかで、それなりの精鋭を連れて行く必要があった。そう、一騎当千の凄腕が必要だったのだ。


 この要求を受けて呼ばれたのがアスランだった。わざわざアルスター邸を訪れてアスランに直接協力を申し入れたグリアノスであったが、頼まれたアスランは二つ返事でこれを受けていた。彼も気にしていた事であり、助けに行きたいと思ってはいたのだ。
 更にアスランはイザークとミゲル、ディアッカを同行させた。やはり技量ではこの3人が最も信頼できる。そしてフリーダムのパイロットという事でルナマリアも同行することになった。これにはエルフィがかなり難色を示したのだが、反対する正統な理由が無かったので渋々受け入れていた。
 アスランは後事をフィリスに頼むと、自分達のMSを持って潜水母艦で出撃して行ったのだ。この時出撃したメンバーには指揮官としてグリアノスが、副官としてジュディが加わっており、更にクルーゼの手元から実戦の勘を取り戻したいと言ってアンテラ・ハーヴェイなども志願していた。水中部隊にはあのマルコ・モラシムも加わっており、MSの数は30機程度とかなりの寡兵であったが異常なほど質が高い部隊となっていた。


 アスランたちが出て行ったアルスター邸には、どこかのんびりした空気が流れていた。フレイは学校で発表する新しい建物のデザインを考えてるし、ソアラは屋敷の管理などに精を出している。そんな中でどうしても居場所を見つけられなかったのがマユだった。アルスター邸はとにかく無駄に広い。そのくせフレイとソアラしか住んでいないので娯楽に乏しい。結果としてマユは一日中テレビを見ているか、フレイやソアラにくっついているくらいしかないのだ。
 アルスター邸の敷地は広く、その気になれば遊ぶ事には事欠かないのであるが、外に出るとザフトが居るのでマユは怖がって外に出ようとはしなかった。フレイはい人も居ると言うのだが、マユはお父さんを殺したようなザフトなんかと会いたくは無かった。フレイはこの屋敷にはザフトは自分の許可が無ければ絶対に入ってはこないと言っていたので、マユはこの屋敷に閉じこもっているのだ。
 そして今日もテレビの前に居たマユの隣に、自室で課題をやっていたフレイがやってきて腰を降ろした。

「マユちゃん、今日もここに居たの?」
「うん、遊ぶ物も無いし、友達とも連絡取れないし」
「街は危ないから1人じゃ出ない方が良いしね」

 オロファトでは反コーディネイター感情の高まりで、オーブ在住のコーディネイターにとっても危険な場所となっている。ナチュラルの市民が同国人のコーディネイターを集団で襲撃するような事件も起きている。
 フレイとしては退屈そうなマユが不憫ではあったのだが、街に連れ出すことは危ないので止めていたのだ。ソアラの買い物に同行する手もあるのだが、マユが何処かに行ってしまったら大変な事になる。今の情勢では迷子になったら身の安全が確保できない。一度はゲーム機などを買ってきたりしたのだが、シンと違ってマユはこういうものでは遊ばないそうだ。マユは友達と一緒に外で遊ぶタイプだったのだ。

「……どうしたものかね」

 マユを何処かに遊びに連れて行ってやりたいのだが、この御時世ではここが一番安全なのだ。それを考えると何処に連れて行けば良いのだろうかと悩んでしまう。まさか学校に連れて行くわけにもいかないし、遊園地などは現在は閉鎖されている。繁華街は危ないし、やはり敷地内で遊んでもらうのが一番良いのだが、それはザフトが居るかも知れないと言ってマユが嫌がっている。
 このことでフレイは暫く悩む日々を続けていた。結局は別館にディアッカたちが居る事が問題なのだが、まさか追い出すわけにもいかないのでフレイにも対処法が無かった。いっそのこと何処かの部屋を潰してアスレチックルームでも作ろうかなどという無茶苦茶な考えまでも出てきたりするのだが、マユが喜ぶかどうか。
 本当にどうしようとフレイはまたガックリと項垂れ、考え込んでしまう事となるのだった。

 そんな事をしていると、ソアラがやってきてフレイに時間だと告げてきた。

「お嬢様、そろそろ難民区に行くお時間ですが」
「ああ、忘れてたわ。すぐに出るわね」

 慌ててソファーから立ち上がってあたふたとバッグを掴むフレイ。そんなフレイにマユは何処に行くのかと聞いた。

「フレイさん、何処に行くの?」
「ああ、オーブの難民が集められてる所。ホムラ様が定期的に支援してて、私も軍の士官って事で参加してるのよ。こう見えても色々出来るんだから」

 軽くガッツポーズを作ってフレイは部屋から出ていった。何だかんだで彼女も結構忙しい毎日を送っているのだ。




 そしてアスランたちが行ってしまって静かになったアルスター邸の東館では、フィリスたちがのんびりとした日々を過ごしていた。改めて彼等が騒動の種であった事が伺える。コーヒーの入ったカップを傾けながら彼女達は近況をのんびりと話し合っていた。

「ザラ隊長たち、無事に帰って来て欲しいですね」
「大丈夫でしょう、ザラ隊長たちは物凄く強いですから」

 エルフィが心配そうに呟くが、それをシホが考えすぎと斬って捨てる。アスランたちの強さは桁違いであり、自分達が心配する事すら愚かしいと言える。この東館に残っている者で彼等を大丈夫だろうかと言えるのはフィリスくらいだろう。まあルナマリアは格がかなり落ちるが、MSが良いので心配する必要はあるまい。
 だが、そのフィリスといえばこちらはなんだかフウッと小さな溜息を漏らしていた。

「困りました、治安の悪化で街に買い物にいけません」
「はあ、それなら配達してもらうとか、ソアラさんに頼むとかすれば良いのでは?」

 何でそんな事で悩むのだとエルフィは思った。生活必需品はこの屋敷に唸るほどあるし、嗜好品の類もソアラに頼めば買ってきてもらえる。だから自分達が無理に街に出る必要はないのだが、なぜかフィリスは深刻そうに悩んでいた。

「いえ、その、人に頼むのはちょっと憚られる物ですから。個人的な趣味ですし」
「そうなんですか?」
「何なんです?」

 シホとエルフィが興味ありそうに聞いてくると、フィリスは少し顔を赤くしてしまった。それを見て2人が怪しそうに目を細める。そして無言の追求に晒されたフィリスは恥ずかしそうにそれを白状した。

「じ、実は、雑誌で前から欲しいと持っていたブラがオーブで売っているんです。それで是非買いにいこうと思っていたんです」
「……もしかして、フィリスさんって下着集める趣味があるんですか?」
「ええ、まあ、その……」

 恥ずかしそうに俯いてしまったフィリス。だがなぜかエルフィとシホは自分の胸とフィリスの胸を交互に見て、そしてガックリと肩を落としてしまった。そこには見た目ではっきりと分かるほどのサイズの差があったから。

「良いですよね、スタイル抜群の人はそういう趣味が持てて」
「そうですよね、特権階級ですよね」

 いじけた2人が肩を寄せ合ってブツブツと愚痴を言い合っている。それを見ていたフィリスがあははと引き攣った笑いを漏らし、そしてこれ以上の追及をかわす為に矛先を別の方に向ける事にした。

「そ、そういえば、シホさんは誰か好きな人は居ないんですか?」
「え……わ、私ですか?」
「ええ、シホさんも誰かそういう人は居ないのかと思いまして」
「あ、シホはジュール副長が好みじゃなかったっけ?」
「いえ、素敵な方だとは思いますが……」

 シホは少し焦った顔でちらちらとフィリスを見ている。フィリスがイザークに好意を持っていることはイザーク以外には周知の事実だからだ。これがルナマリアであれば物凄い緊張が走る所だろうが、フィリスはそんな事はなく、涼しい顔でコーヒーを啜っている。フィリスはそこまで嫉妬心を見せるタイプではなかったのだ。
 ただ、フィリスはコーヒーのカップをソーサーに戻すと、シホに別の男の名前をぶつけてきた。

「ところで、ジャックさんのことはどう思ってるんです?」
「ど、どうって、どうも思っていませんっ」

 今度は顔を赤くして随分と鋭い口調できっぱりと否定するシホ。それを見たフィリスがくすっと小さく笑い、エルフィがニヤニヤと笑っている。そんな分かり易い反応をすればバレバレである。
 2人にからかわれていると察する余裕も無いのか、シホは笑う2人に必死に否定の言葉を並べていて、それが更に2人を笑わせてしまう。そんな笑えない悪循環に捕らわれてしまっていた。



 そんな東館の庭で、レイはミグカリバーとチェスを指していて、ジャックは他のデボたちに豆を餌として撒いてやったりしていた。

「なんか、肩身狭いよな俺たち」
「……そうですね、女の方が多いと、身の置き場に困ります」

 エルフィとは別の意味で、2人もアスランたちが無事に早く帰って来て欲しいなあと思っていたりする。女ばっかの環境だと、男は自然と脇に追いやられてしまうのだ。





「あーおいそーらー、しーろいーくもー!」

 グアムからシンガポールへ向う途中の船上で、ステラはかなりご機嫌だった。降ろした装備の輸送もあって軍の高速輸送艦を使わせて貰っているのだが、ステラは海がたいそうお気に入りのようでずっと甲板ではしゃぎ続けている。
 なお、本来なら1隻で航行する高速輸送艦に護衛など付かないか、付いても駆逐艦1隻が良い所なのだが、この船には自由オーブ軍御一行、それもカガリ代表が乗ってるとあって大西洋連邦軍が過剰なサービスをしてくれて、輸送艦の周囲には4隻の駆逐艦と6隻のフリゲートが付いていた。ザフトの潜水母艦といえでもこれは手を出したくないだろう。
 そんなステラが海の落ちたりしないようシンが見ている。他にも甲板ではエドワードとマユラが久しぶりの地球で何をしようかと相談しているし、他の同行してきた兵士たちのカップルで甲板は結構にぎわっている。
 そんな甲板を艦橋の近くにあるウィングの見張りから見下ろしていたカガリは苦笑を浮かべて後ろを振り返っていた。

「全く、もうすぐ戦争が始まるってのに、どいつもこいつも暢気だな」
「カガリが言う事じゃないと思うけどね」

 ボードに挟んだ書類に目を通しながらユウナがサラリと返した。それを聞いたカガリが目元をぴくっと動かしたが、まあ何も言わなかった。そしてユウナと2人で視線を何となく隣の方に移す。

「で、アレはどうにかならんのか?」
「いや、アレは放っておくしかないだろ」

 自分たちが出ているウィングには、何故かキラとアサギが居てどんよりと暗い空気を背負いながら手摺に身体を預けていた。

「はあ、ジュリが死んで、私はなんか居場所が無いわ。目の前でラブラブされるとねえ」

 アサギはうんざりという顔をしている。どうもジュリが戦死した後はエドワードとマユラを1人で相手にする羽目になって何となく身の置き所に困っていたようだ。挙句に目の前でイチャイチャされるから精神衛生上極めて宜しくないらしい。
 暫くブツブツ言っていたアサギであったが、遂にはガックリと項垂れてしまった。多分自分で言ってて空しくなったのだろう。

「はあ、私も彼氏つくろっかなあ」

 友情は愛情には勝てないのだという現実を前に、アサギはかなり落ち込んでいた。
 その呟きを聞いてしまったカガリとユウナは困った顔を向け合い、そしてやれやれと溜息を吐いている。人の色恋沙汰は笑い話の種としては最上だが、暗いネタとなるとこれほど厄介な物も無いのだから。
 そしてキラはといえば、こちらはもう完全にただの馬鹿となっている。

「うう、フレイに会ったら何言おうかな。いや、それよりプレゼント渡した方が良いのかな。でも女の子って何渡せば良いんだろ。パソコンパーツとかじゃ駄目だろうし……」

 こちらはこちらで頭抱えて深刻そうに考え続けている。それを聞いたカガリは右手で頭を押さえて愚弟のアホな疑問を機って捨てていた。

「何処の世界に再会のプレゼントにパソコンパーツ貰って喜ぶ女がいるか」
「まあ居ないとは言わないけど、普通は違う物にするね」

 呆れ果ててるカガリに苦笑するユウナ。ユウナにすれば初々しくて笑える苦悩なのだが、カガリにはそうでもないらしい。まああの年頃意ならこういう悩みで頭を抱えるものだと分かったようなことを呟くユウナにカガリが何か言い返そうとしたが、いきなりキラがカガリの方を見てアホな事を聞いてきた。

「そうだ、カガリも一応女の子なんだから、こういう時何送ればいいか分からないかな?」
「一応じゃねえ、私は女だ!」
「まあまあカガリ、他所様の船で暴れちゃいけないよ」

 殴りかかろうとするカガリを押さえ込みながらユウナがカガリを宥める。ここは大西洋連邦の船なのだから、恥かかすなと言っているのだ。それでカガリが渋々拳を収めると、自分が貰って喜びそうなものを答えた。

「そうだな、私ならやっぱりトレーニングウェアとかダンベルとか、ああ新しいシューズも良いなあ」
「…………」
「…………」

 それを聞いたキラとユウナがなんとも言えない顔でカガリを見た後、キラはまた海に視線を向けてふうっと溜息を漏らし、ユウナはボードに視線を戻した。その2人の態度にカガリが動揺を露にしながら焦った声で抗議してくる。

「な、何だよ、何かおかしかったか?」
「カガリ、普通の女の子はダンベル貰っても喜ばないだろ」
「そうか、私は新しいのが欲しいんだが?」

 ユウナの呆れたような答えにカガリが不思議そうに聞き返し、ユウナはやれやれと肩を落としてしまった。そしてキラの方を見て簡単なアドバイスを送ってあげた。

「まあそう悩まなくても、無難にアクセサリーとかで良いと思うよ。彼女の好みの香水とか化粧品とか、小さくて渡し易い物にすれば良いさ」
「そうですかね?」
「嵩張る物だと意外と邪魔になるんだ」

 人生の先達としてアドバイスをくれるユウナ。それを聞いたキラはなるほどと頷いてまた考え出してしまい、ユウナはくすっと笑ってカガリを見たが、なぜかカガリはむすっとした顔をしていて、ユウナはあれっという顔をしてしまう。

「どうしたんだ?」
「アクセサリーや化粧品なんて食べられないし、あっても邪魔なだけだろ。何でそんな物送るんだよ」
「…………」

 それを聞いたユウナはなぜかキラの隣に並んで手摺に両腕を組んでもたれかかり、視線を水平線に向けて黄昏てしまった。その反応を見たカガリが大声で抗議しているがユウナは全く聞いておらず水平線を見て苦笑いをしている。彼は彼で色々と苦労が多いのだ。




 輸送艦は無事にグアムからシンガポールに辿り着き、そこで人員とフリーダムを降ろしている。シンガポールに降りたカガリたちは待っていたティリングたちオーブ洋上艦隊の士官たちに出迎えられて久々の再会を祝っていたのだが、カガリはきょろきょろと辺りを見回していた。それを見たティリングがどうしたのかと聞くと、カガリはバツが悪そうになんでもないと返している。
 カガリはシンガポールにアークエンジェルが入港しているのを見ていたので、あいつ等が出迎えに来てくれてるのではないかと期待していたのだ。だが流石にそれは無理な望みであったらしい。まさかカガリがシンガポールに来ることが公開情報として流布されているわけでもあるまいから。
 この後カガリは主要なスタッフを伴ってシンガポール基地を管理している連合軍の司令部に顔を出した。シンガポールそのものは赤道連合の拠点だが、この方面に展開している地球連合軍の司令部も置かれている。そこに顔を出し、オーブ解放作戦の詳細を聞くのが目的だった。
だが、そこでカガリは意外な男と再会をする事となった。

「やあカガリさん、お久しぶりですね」
「お、お前はアズラエル!?」

 そう、カガリを出迎えた面子の中にはアズラエルが居たのだ。自分を見て驚いているカガリにアズラエルは少し不満そうな顔になる。

「何ですか、僕が居るのはおかしいですか?」
「おかしいだろ。お前会社は良いのかよ?」
「何、僕が居なくても会社経営は大丈夫ですよ。世界屈指の財閥の人材の層の厚みを舐めないで下さい」
「なるほど、だから何時も暇そうにうろついているんだな」
「いや、別に暇な訳じゃないんですけどね」

 アズラエルが反論するが、実際フレイの屋敷に入り浸っていたり、あっちにフラフラ、こっちにフラフラしているアズラエルは暇そうに思われても無理は無い。だから文句を言う声には何処か力が無かった。
 そして負けを認めたアズラエルはフラフラと右手を軽く振り、話題を別の方に振った。彼は別にカガリと遊ぶ為にここまで来たわけではなく、ちゃんとした目的があったのだ。それはカガリにとって悪い話ではなかったが、かなり裏を感じさせる物であった。

「実は、我が社の開発した新型MSがありまして、それをオーブ軍に供与しようと考えているんですよ」
「新型って、良いのかよそんなの貰っても?」
「ええ、僕のカガリさんへの善意のプレゼントだと思ってください」

 にこやかな営業スマイル全開でそう言うアズラエルであったが、帰ってきたのはなんとも胡散臭い物を見るような目を向けてくるカガリやキラたちの呆れた顔であった。

「アズラエル、お前が善意だあ、ジョークにしても笑えんぞ」
「ああ、こいつにあるのは打算であって善意じゃないからな」
「流石にそれは無理があると思います」

 カガリが、キースが、キラがボロクソに言ってくれる。彼等が普段アズラエルをどういう風に思っているかが良く分かるだろう。むしろそれを聞いていた地球連合軍の高官たちの方が顔を青褪めさせていて、焦った風になっている。彼等にしてみればブルーコスモスの総帥でり、軍需産業理事であり、大西洋連邦内に大きな権勢を振るうアズラエルは恐ろしい相手なのだから。
 だが、この気分屋で知られる理事が、何故かこの3人の侮辱としか思えない言葉の数々に苦笑するだけに留めている。これが彼等を戸惑わせていた。あの気分1つで将官の首を挿げ替えるとまで言われる大西洋連邦の裏側の支配者とは、実は以外に寛容な人物だったのだろうか。
 そしてアズラエルは戸惑う軍の高官たちを無視してボロクソに言ってくれるカガリにジョークでは無いと言った。

「酷いですねえカガリさん、ジョークでこんな事言いませんよ」
「じゃあ、本当にうちに新型機をくれるのか?」
「ええ。まあタダという訳じゃないですけどね。タダじゃカガリさんも色々と気に病むでしょうし」
「いや、タダほど安い物は無いから全く構わないぞ」

 さりげなく貸しを作ろうとするアズラエルと、機体は欲しいが借りはご免だと暗に返すカガリ。その瞬間2人の間に緊張が走ったが、すぐに2人ともその緊張を解いた。今更このくらいのやりとりで怒りをぶつけ合うような関係ではない。

「まあ冗談はこれくらいにして、交換条件は機体の運用データを全て提供してくれる事ですね。まあデータが取れれば機体は壊しても構わないんで」
「大丈夫なんだろうな。使ってる時に機体が分解するとか、フリーダムみたいにバールで殴らないと動かない時があるとか、見たいな欠陥機じゃないよな?」
「なんですそれ、バール?」
「ああ、フリーダムは端末をバールでぶん殴らないと動かない時があるんだ」

 それを聞かされたアズラエルは、何なんだそれはと呆れてキラの方を見た。

「一体、ザフトの最新型ってどういう代物なんです?」
「僕に聞かれても困るんですが……」

 コーディネイターの技術の粋を結集したフリーダムが、まさかバールでぶん殴るなどという方法で調整するMSだったなどとは夢にも思わなかったキラだった。まあ普通は思わないだろう。呆れたクローカーはオーブ製のシステムにそっくり載せ代えて欠陥を修正したくらいだ。ただ、この為にザフト製フリーダムとは微妙に性能が変わってしまっていたりする。
 そしてアズラエルは、この新型はキラに使って欲しいと言って来てカガリとキラを困惑させてしまった。何故キラでないといけないのだ。それに対してアズラエルはとんでもない答えを返してきた。

「実はオーブから貰ったNJCと、連合で最高の性能を持つMSクライシスを組み合わせた新型機を作ったんですけど、これがとんでもなく使い難い機体になっちゃいましてねえ。うちの強化人間でも殆どの者は扱い切れなかったもんで、困ってたんですよ」
「何でそんな滅茶苦茶な物を作ったんだよ」
「それが、フリーダムやジャスティスに勝てるナチュラル用MSを作る計画だったんですけど、完成してみたら下手なコーディネイター以上の能力が必要なんて欠陥機が出来ちゃいましてねえ。まあ運用データを集めながら操縦系統を改良して汎用性を向上させるのが当面の課題です。とりあえずこのデータを利用して今開発中の次期主力MSを完成させるんですよ」
「次期主力機?」
「ええ、クライシスを元に開発中のゲイツを圧倒できる量産型ですよ、ウィンダムという名前です」

 ウィンダム、そんな物を開発していたのかと知ったカガリとキラ、ユウナは驚いていた。キースは実は噂程度には知っていたので驚いてはいない。ゲイツに対しては105ダガーとデュエルダガーが対抗可能であるが、この2機種は高級機で数が少ない。装備優良部隊の第8任務部隊などには多数が配備されているが、大半の部隊は相変わらずストライクダガーで頑張っている。だがこれだとジン相手ならともかく、シグーやゲイツには苦しい。よってこれらを打倒しうる新型が求められたのだが、それに答えたのがウィンダムであった。
 ただ、これの配備にはまだかかりそうであり、替わりに105ダガーの性能を若干向上させつつ生産性を大幅に改善したダガーLを開発、配備する事にしており、アズラエルはこれもオーブ軍に持ってきてくれていた。

「これまでに支給したストライクダガーとは別に、新型のダガーLを供与します。M1より使い易い事は保証しますよ」
「……また随分と大盤振る舞いだな。何か変な物でも食ったか?」
「そんな訳ないと言いたいんですが、まあ試供品と思ってください。気に入ってただけたらオーブ軍に採用して貰いたいなあと思ってたりします」
「お前、それはM1の数が足りないうちの弱みに付け込んでるだろ」
「ビジネスはクールに行きますよ、私は」

 相変わらずの拝金主義かと言いたい所だったが、確かにこれはありがたい。M1は海外の工場やアメノミハシラで生産しているが、やはり本土の工場が使えないのは痛く、消耗に補充が追いつかない。それを考えれば105ダガー級の性能を持つMSの供与はありがたいとしか言えない。
 この件に関しては素直に礼を言って、カガリはアズラエルの話に乗る事にした。現実問題としてMSの数は力であり、多少の質の差は数で補う事が可能である。アメノミハシラ守る戦いでオーブ軍は将兵のレベル差を数の差で必死に埋めていたのだから。ただそのせいで凄まじい消耗をしてしまい、M1の数は激減してしまったのだが。ティリング指揮下のオーブ艦隊も保有するMSの大半はストライクダガーだ。タケミカズチの艦載機も国産のレップウの数は少なく、格納庫を満たしているのは大西洋連邦から供与されたサンダーセプターが多い。既にオーブ軍も大西洋連邦の武器で戦っているのである。
 現在の地球連合で独自の装備を運用できているのはユーラシア連邦と極東連合くらいだろう。東アジア共和国は大西洋連邦やユーラシアの兵器のデッドコピーなので、独自の装備とは言い難い。しかもオリジナルよりかなり性能が落ちているから性質が悪い。
そして赤道連合を初めとする中、小国は自前の装備ではザフトにはまるで歯が立たない。何しろ使ってる装備が完全に1世代、ないし2世代は遅れていて、ジンにも対抗できない。この辺りはオーブも同じで、M1などの一部の装備は最先端を行っていたが、全体を見ればやや旧式だった。
 そんな弱い国が手っ取り早く軍の近代化をするには、大西洋連邦から安く武器を買うのが一番確実なのだ。これで最近の優勢も加わって各国は更なる軍拡を行っている。このおかげでアズラエルを含むロゴスは大儲けしており、今回のような無償供与などを気軽に行う余裕もあったのである。これで新しくオーブ軍という顧客が出来ればこの程度の先行投資は安い物なのだから。もっとも、戦争景気は終戦と共に崩壊するので笑ってもいられないのだが。

「まあそんな訳でして、キラ君のような優秀なパイロットに使ってもらってさっさとデータを集めたいなあというのが、私の考えです」
「それならアルフレットのおっさんに頼めば良いだろ」
「彼なら確かに問題はないんですが、断わられちゃいまして」

 実は最初、アズラエルはこれを第8任務部隊に預けてデータを取ってもらおうと思っていた。だがこれにマリューだけではなく、当のアルフレットまでもが反対したのだ。ただでさえ前線の指揮官をやらされて忙しいのに、更に機種転換訓練までやってる時間は無いと言われたのだ。これは純然たる事実であり、アルフレットには全く余裕などなかった。オーブ解放作戦に第8任務部隊を外せるなら可能だろうが、そんな事すれば作戦部が黙っていないだろう。現在の地上軍で第8任務部隊ほど頼れる部隊はないのだから。
 この為にアズラエルはこの機体の扱いに困ってしまい、悩みに悩んだ末にカガリに回す事にしたのだ。オーブはNJCのデータを持っているので、技術が流れても問題はない。

 カガリはその新型のパイロットは機体を見せて貰ってから決めると言ってこれ以上話が長引くのを避け、軍の高官たちに改めてオーブ開放作戦の詳細説明を求めた。とりあえずカガリにとっての関心事は新型MSではなく、オーブが取り戻せるのか否かだったから。




 司令部での話を聞いた後、カガリたちはアズラエルの案内で軍の格納庫へと案内された。そこにはストライクをダガー系にしたようなMSが所狭しと並べられていて、カガリたちを驚かせている。

「これがダガーLです。とりあえずゲイツには勝てると思いますが、その改良型にはまだ何とも言えません。ましてや核動力MSには苦しいです」
「そこまで贅沢は言わないさ。中々良いMSみたいじゃないか」
「そりゃまあ、大西洋連邦の肝いりで開発した物ですから」

 大西洋連邦はダガーが配備されるのと同時期に出てきていたゲイツに対抗できるMSをずっと求めていた。これに対してアズラエル財団は105ダガーで答えたのだが、これは高すぎて数を揃えるのが容易ではなかった。これを受けて105ダガーの基本性能を向上させつつ、いくつかの特徴を犠牲にして大胆なコストダウンを実現したのがダガーLだ。まあ見た目はストライクダガーダガーと大して変わらないのだが。
 その特徴は低コストでバックパック換装システムを実現したという点にある。元々バックパック換装システムには無駄が多い。アレだけの重量物を上半身で付け替えるのだ。当然重量バランスは滅茶苦茶になるので、脚部の強度やバランサーは無駄に余裕のある設計を求められる。そうでなければ重いパックを付けたら地上では起き上がる事も出来なくなってしまうし、宇宙では重心が換装毎に狂って真っ直ぐ飛べなくなる。その辺りを考慮して無駄な設計をしなくてはいけないので、当然ながら個々の目的に特化した専用機には及ばない。専用機はそんな無駄な設計はして無い分、同等の機体なら性能は高くなる。
 そんな無駄な設計が行われるバックパック換装型MSを低価格で供給できる所にアズラエル財団の凄さがあると言えるだろう。このシステムも量産効果でコストが下がるほどに供給が進むほどに連合内に普及したという事だ。

「まあこれはどうでも良いとして、目玉は奥にあるアレですよ」

 アズラエルはダガーLにはさほど興味はないようだった。ダガーLは技術的にはこれといった特長は無いMSであり、説明しても面白くないからだ。アズラエルが自慢したい目玉商品はその奥にあるクライシス型のMSだった。

「これが、アズラエル財団が地球連合諸国の技術を結集して開発した、この戦争を終わらせる為のMSです。ナチュラルが使ってフリーダム、ジャスティスを倒しうる性能を与えられていますよ」
「こいつが……」

 それはダガーLとは全く異なるMSだった。ベースにはクライシスを使っているようだが、外観は全く別のMSと化している。両肩にはシールド型の可動バインダーを装備し、左腕にはABシールドを装備している。右手に持っているのは槍だろうか。これまでの連合製MSとは明らかに異なるタイプのMSだった。

「これがアズラエル財団が開発した核動力MSです。ベース機の開発コードネームからカタストロフィ・シリーズと呼んでいますがね。バックパック換装システムは廃止して、手持ち武装と追加オプションで対応しています」
「シリーズ? それじゃこいつは他にも違うのがあるのか?」
「ええ、ほかにも数種類ありますよ。ここにあるのはその中の1機です」

 アズラエルはその足元に歩いて行き、右手を足の装甲に付けて機体を見上げた。そこには不敵な笑みが浮かんでいる。

「これはこの戦争を我々の勝利で終わらせる為のMSです。カタストロフィ・シリーズの1番機、極東連合から得た技術を投入して完成された先陣を駆ける者。その意味を込めて、私はヴァンガードと名付けました」
「これを、オーブに?」
「ええ、アズラエルの名に掛けて自信を持って送りますよ」
「……ヴァンガード、か」

 その名を呟いて、カガリは機体をゆっくりと見上げていった。そしてキラはアズラエルの傍に来ると、どういう性能なのかを聞いた。

「これは、どういうMSなんです?」
「クライシスという連合最高のMSに核動力炉を搭載し、基本性能ではフリーダムやジャスティスを超えたと自負していますが、その辺りは使ってみて判断してください」
「両肩のアレは何です、シールドみたいですが?」
「ああ、アレはエネルギー偏向シールドです。フォビドゥンというMSで採用されたビーム偏向装備で、ビーム兵器を逸らせる事が出来ます」
「それって反則じゃないですか?」
「まあそうですね。可動バインダー型で、フォビドゥンとは異なり防御のみの装備となっています。その分有効範囲は増して防御力が向上し、両腕の動きを阻害する事もありません」

 なんという無茶苦茶な装備だ。これではフリーダムでは絶対に戦いたくない相手となるだろう。事実上プラズマ砲やビームライフルでは撃破は困難となるから。これで装甲がPS装甲だったらフリーダムではまず勝てない。懐に飛び込んでゼロ距離からビームサーベルを突き刺すという無茶をするしかなくなるが、あの槍や名前からするとこれは接近戦型MSだろうから、多分負ける。
 冷静にこれに勝てるかどうかを考えていたキラは、なんだかだんだん腹が立ってきていた。これは反則ではないのか。そんなキラの内心の葛藤など気にすることもなくアズラエルは話を続けている。

「因みに装甲はクライシスのラミネート装甲を極東連合の治金技術とセラミック技術を導入して更に強化した物です。いやはや、昔っから欲しかったんですが、中々供与してくれなかった技術ですよ。おかげでクライシスの装甲が更に頑丈になって、ラミネート装甲なのに砲弾を易々弾き返すような理不尽な装甲が完成してしまいました」
「…………」
「あの槍は極東連合が完成させた突撃槍です。アーマーシュナイダーと同じ高周波剣ですが、それを槍の穂先に採用した大型白兵装備でして、突撃用に推進器が増設されています。実剣ですが、PS装甲でも貫くことが可能ですよ」

 何とも豪華なMSだ。その無茶苦茶な性能にカガリたちが感心していると、キラが我慢の限界に達して抗議の声を上げてしまった。

「こ、こんなの反則だあ!」
「まあ、反則ですよ。でもザフトがNJCなんて物を作らなければこれは完成しませんでした。核動力炉があって初めてこれは実現できたんです。そういう意味では、まさに因果応報ですね」

 ザフトが完成させた核動力機の技術が今度はザフトを苦しめる事になる。戦争とは技術競争の側面を持つが、一方が開発した技術が敵に渡り、敵が利用して自分達を苦しめるようになるというのは世の常である。かつてザフトが投入したMSが連合に現れた途端戦線を押し返されるようになり、一発逆転を期待して開発された核動力機の技術も連合に流れてそれを超える化物の開発を促してしまった。戦争はこのイタチゴッコの連続なのだ。ただ違うのは、連合には手にした技術をすぐに物にしてしまう国力があったというだけである。
 だが、アズラエルはここで一度言葉を切り、なんだか憂鬱そうに顔を顰めてしまった。

「ですが、このMSも無敵ではありません。ザフトは倒せる武器を持っています」
「倒せる武器、ですか?」

 キラが首を捻っている。こんな化物を倒せる武器といわれても、見当が付かないのだ。困惑しているキラを見て、アズラエルはヴァンガードの持っている槍を見た。

「あの槍と同じです。高周波ブレードを持った新型MSと貴方たちオーブ軍は戦っているはずですよ。ザフトの開発コードではザクと呼ばれている機体です」
「ザク、あのシンが戦った新型の事ですか」

 ザフトが交戦したザフトの新型はトマホークを振り回してABシールドさえ容易く両断したという。あれはこのMSの装甲を切裂けるという事なのだろうか。確かにどれだけ強力なソフトキル防御を施していようと、実体兵器なら問題はない。しかもPS装甲さえ切裂けるというのなら撃破は可能だろう。
 時代はフリーダムやジャスティスさえ旧型にしようとしているのだろうか。そんな勢いで新型MSが次々に登場していて、際限のない競争が続いていく。

 キラは改めてヴァンガードを見上げると、フリーダムの姿をそれに重ねてしまった。どちらもそれぞれの勢力の勝利を託された決戦兵器だ。その2つがよりにもよって自分に託されるとは、改めて自分の生まれを考えざるを得なかった。ラクスはSEEDがどうとか言っていたが、最高のコーディネイターという部分を考慮していたのではないだろうか。
 そしてキラは、アズラエルとカガリに自分の考えを伝えた。

「アズラエルさん、カガリ、これは僕は乗らないことにします」
「何故ですか。フリーダムにも決して負けない機体ですよ」
「そう思います。いえ、多分フリーダムではこれには勝てません。ですが、フリーダムはラクスに託されたMSなんです。だから僕は、せめてラクスともう一度会うまでは使い続けようと思うんです」
「ラクスさんに託された、ですか」

 アズラエルは少し困った顔をしたが、すぐにどうしたものかと呟いて右手で頭を掻きだした。キラが断わるとなると、さて誰をパイロットにすればいいのやらと悩んでいるのだ。こうなったらオルガ辺りにでも任せようかなどと考えていると、キラが1つの提案をしてきた。

「でも、僕以外で良いパイロットが居ます。きっと使いこなせますよ」
「おや、オーブ軍に貴方以外にもそんなパイロットが?」
「はい。まだ荒削りですけど、僕に本気を出させるパイロットです」
「君が本気をですか。それは凄い」

 キラが本気を出すようなパイロットは滅多に居ない事はアズラエルにも良く分かるだけに、この評価には素直に驚いていた。そして少し考えた後、カガリの方を見る。

「良いでしょう、カガリさん、そのパイロットにこれを預けますよ。オーブ解放作戦までには仕上げておいて下さい」
「私に言われてもなあ」
「でも誰なんです、その凄腕というのは?」

 オーブ軍にはそんな凄腕が居ただろうかと首を捻るアズラエル。だがそれを聞かれたカガリはなぜか肩を震わせてくぐもった笑いを漏らし、ユウナとキースは肩を竦めてしまった。キラといえばこちらは我関せずとばかりに明後日の方向を見て誤魔化している。その反応を見て付いて来ていたティリングたちは困惑していたが、アズラエルは凄く心配そうな顔になってしまった。本当に大丈夫なのだろうか。



「ぶぇーくしょい!」
「シン、風邪?」

 その頃、港では船から荷物の積み出し作業をしていたシンが原因不明のクシャミを連発していた。



後書き

ジム改 さあ、次回はシンが死ぬな。
カガリ ヴァンガードって反則じゃねえのか?
ジム改 クライシスにフォビドゥンの装備を追加した接近戦型MSだぞ。
カガリ いや、フォビドゥン自体が元々反則っぽいMSだし。
ジム改 まあなあ。
カガリ んで、これのファミリー機は何時出てくるんだ?
ジム改 まあその内に。それにこれ、ザクが相手だと危ないんだよな。
カガリ 高周波トマホークか。確かにアレも結構反則だよな。
ジム改 俺はどうしてもあれを高速振動剣と言ってしまうがな。
カガリ お前はメリケン製の重さは強さなゲームのやりすぎだ。
ジム改 うむ、わりと反省している。
カガリ まさかXLエンジンとかストリークLRMとかは出ないよな。
ジム改 いや、出してどうする?
カガリ オートキャノンとか粒子ビーム砲は出そうだけどな。
ジム改 ……氏族のメック戦士はコーディネイターそのものだよな。
カガリ それは禁句だあ!!
ジム改 それでは次回、難民区で襲われるフレイ。ヴァンガードへの機種転換をするシン。ステラはアークエンジェルに帰り、キラたちも久しぶりにアークエジェルの仲間達と再会する。そしてアークエンジェルでは簡単なパーティーが開かれる事になった。次回「光と闇と」でお会いしましょう。

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