第146章  理想を求めた者たち




 CE72年1月18日、クルーゼ率いる艦隊がメンデルに姿を現した。哨戒に出していた偵察型ジンからこの報を受けたダコスタはすぐに迎撃体制を整えさせたが、その数の多さと、敵の戦力分析を進めたことによってすぐに勝ち目がない事を悟ってしまった。ラクス軍を編成したのは彼である。だから自分たちの実力がどれくらいかはよく理解していたし、ザフトが本気で出てきたら勝てない事を良く知っていた。

 この報せを受けたラクスは顔色を曇らせたが、別段取り乱す事は無かった。見かけによらず肝は据わっているのだ。彼女は報告を寄越してきた部下を下がらせると、副官のダコスタに接近してくる艦隊と話すことは出来ないかと尋ねた。

「ダコスタさん、話し合いで戦いを避ける事は出来ないでしょうか?」
「ラクス様、敵はエザリア・ジュールが肝煎りで送り込んできたと思われる艦隊です。指揮官は情報を総合するとどうやらあのラウ・ル・クルーゼ隊長のようですし、話し合うことは不可能かと」
「クルーゼ隊長、ですか……」

 クルーゼの名を聞いたラクスの顔に微かだが嫌悪の色が浮かぶ。彼女がここまではっきりと拒絶する相手をダコスタは他に知らなかった。何故かは分からないが、ラクスはクルーゼを忌み嫌っているのだ。
 相手がクルーゼと聞いたラクスは戦いを避ける事が不可能だと悟ったのか、直ちに迎撃戦の準備をするように指示を出す。それを受けてダコスタは早速迎撃戦のプランを練り始めたが、集められた情報を分析した彼は絶望に挫けそうになってしまった。エターナル改級2隻にはミーティアタイプが合わせて4機もあり、ジャスティスやフリーダムも多数装備している。主力はゲイツを多数保有しており、装備面ではザフト宇宙軍でも最高の部隊の1つだろう。そしてそのパイロットにはアンテラ・ハーヴェイやガザート・サッチといったエース級が揃っている。



 戦っても勝ち目はない。そう悟ったダコスタはメンデル内に残っていたジャンク屋に脱出を勧めると共に、友人であるロウに頼み事をしていた。

「ロウ、ラクス様を乗せてこの宙域を脱出して欲しい」
「おいおい、いきなりなお願いだな」
「代金はここにある物資を好きなだけ持っていってくれ、どうせ残していても意味の無い物だ」
「……勝てないのか?」

 勝ち目のない勝負を挑むようなダコスタではない筈だが、彼は戦うつもりらしい。これまで自分で守ってきたラクスを他人に任せようというのだから、その覚悟の程が知れるというものだ。
 
「勝ち目が無いなら無理して闘うこと無いだろ?」
「出来ればそうしたいが、敵はもうそこまで来ている。誰かが暫く時間を稼がないとお前たちも逃げれなくなるぞ」
「やってみなくちゃ分からないだろ!」
「やってみなくちゃ分からない、そんな賭けにラクス様の命を晒すわけにはいかないさ。それに、俺の代わりは探せば居るがラクス様の代わりは居ない」

 実務家のダコスタの代わりは探せば見つかる。だがラクスという強烈なカリスマには代わりは居ない。彼女は余人を持って替えられない人材なのだ。だからダコスタはラクスを逃がそうとしていた。ラクスが生きていれば、自分たちの求めた理想の芽は残るのだから。

「ロウ、メンデルを脱出したらプラントにラクス様をお送りしてくれ。あそこにはまだ同志が残っているから、彼らと合流すれば地下活動を続けられるだろう」
「お前は、それで良いのか?」
「人間誰しも役目があるのさ、俺はラクス様を守るのが仕事だ」

 ラクス軍が総力を挙げて迎撃に出ればジャンク屋の船など追う暇はあるまい、ラクスを逃がすにはこれが最も確実な手だと言うダコスタに、ロウは納得できない気持ちを抑えられずに身体を振るわせていた。

「まだ、負けるって決まった訳じゃないだろ。劾たちも居るんだ、そうそう負けるもんかよ!」
「……ああ、そうだな、負けるとは限らない。じゃあ言い換えよう、俺たちが勝つまでラクス様を避難させておいてくれ」
「ダコスタっ!」

 苦笑して言い直したダコスタの胸倉を掴み上げて、ロウは苛立ちを言葉に乗せて叩きつけた。それは納得できない感情をそのままぶつけた物だった。

「俺はお姫様をプラントになんか送らねえからな、面倒は背負い込むのは御免だ!」
「あ、ああ、そうか……」
「分かったな、絶対に引き取れよ。そうでなきゃ許さねえ!」

 掴み上げた胸倉を離して、ロウは怒った態度を隠しもせずにダコスタの前から去って行ってしまった。暫く酸素を求めて苦しそうに咳き込んでいたダコスタであったが、ロウが去って行った方向を見て済まなそうな声を出す。

「悪いロウ、お前が一番嫌いな頼み事をして」

 だが、こういう時に一番頼れる相手だと言える。こういう時に頼める友人を持てたのは幸福な事なのだろう。だが、ダコスタはこれまでやってきた事を思い返して、この戦いが決して上手くいっていた訳ではない事を思い返して少しだけ苦笑いしてしまった。
 マルキオが連れてきて、ラクスが仲間に引き入れようとした最高のコーディネイターであるキラ・ヤマト。ラクスの婚約者で、ラクスがこの時代の流れに気付いて行動を起こしてくれると期待していたアスラン・ザラ。ラクスの友人でラクスの理想に共感してくれたフィリス・サイフォン。そしてオーブの現代表となったカガリ・ユラ・アスハ。マルキオがSEEDを持つ者だと言った4人の少年少女をラクスは共に歩む同志として迎え入れようとしたが、彼らは誰も自分たちの所に来てはくれなかった。フィリスも自分たちの元から去ってしまった。
 彼らが手を貸してくれていれば、今度の戦いは勝算を持って挑めただろう。カガリはともかく、他の3人は今や両軍で勇名を馳せる屈指のエースパイロットであり、1機で1部隊に匹敵する戦力となるからだ。そうすればダコスタも勝ち目を考えて戦えただろうに。

「まっ、世の中そうそう上手くはいかないよな」

 味方に引き込もうとしていたバルドフェルドはキラ・ヤマトに討たれてしまった。あの時から全ての予定が少しずつ狂っていったのだ。それでもアズラエルの協力を取り付けて資金を確保し、マルキオのツテで人材を集めて更にジャンク屋の助力を得て、ようやくメンデルに拠点を形成して1個艦隊程度の軍事力を整備する事が出来た。ここまでやれた事はむしろ誇るべきかもしれない。
 だが、それだけの努力をしてもこの戦争の流れを変える事は出来なかった。いや、最初からどうにかする具体的なプランなど無かったのだ。理想が先行して現実を見る目を欠いていた自分たちの組織は現実を無視する傾向があり、理想に向けて突き進んでいた。時としてそれは理想が現実に優先されるような事態さえ生じ、その隙間を埋める為に自分たちがラクスの替わりに奔走していたのだ。
 バルドフェルドの頃から忙しい日々で幾度も弱音を吐いたが、それはそれで楽しい日々であった。

「ラクス様をバルドフェルド隊長の二の舞にする訳にはいかない、なんとしても脱出させなくては」

 プラントの同志と合流すれば再起を図る事も不可能ではない。とにかく生き残れば次に繋げる可能性を残せるのだから。そう考えて、ダコスタはラクスの下に足を運んだ。恐らく彼女は拒否するだろうから、それ相応の手段を覚悟しながら。





 メンデルに迫ったクルーゼは偵察機からの報告でメンデルから多数の艦隊が出撃している事を知り、ほうっと感心した声を漏らしていた。

「我々と真っ向から勝負するつもりなのか、単なる馬鹿か、それだけの戦力を持っているのか?」
「確認されている戦闘艦艇は30隻前後、こちらとほぼ同数です。それだけの戦力を持っているのではないでしょうか?」
「ふむ、防御施設も加えれば我々に勝てる自信がある、という事か。では、その自信が過信であったと教えてやるとしよう」

 クルーゼは血の匂いをさせる笑みを浮かべると、アンテラにMS隊の一部を先発させるように命令した。恐らく敵はメンデルとその周辺に防御砲台や機雷による縦深陣を敷いているだろうから、まずMSを出して様子を見る事にしたのだ。
 これを受けてアンテラは斥候としてジンHM3機を先行させたのだが、これはいきなりラクス軍のものと思われるMSの襲撃を受けて撃破されてしまった。どうやら敵はデブリに紛れて相当数のMSを既に配置していたらしい。
この迎撃を見たアンテラはあらかじめ用意していた第1波を送り込んだ。その中にはユーレクのゲイツRやガザートの試作ザクの姿もあり、ラクス軍にとってはかなり手ごわい相手となっている。
 これに対してラクス軍は劾のブルーフレームやカナードのハイペリオンといった傭兵部隊を中心とする迎撃部隊で迎え撃った。傭兵部隊はそこそこに強く、クルーゼ艦隊から出てきたゲイツやジンHMを相手に概ね互角に戦えている。
 だが、フリーダムやジャスティス、試作ザクといった規格外MSには歯が立たなかった。元々1機で戦場を支配できるという目的で開発された機体だ。実際にはそこまで完璧な機体ではなかったが、それでも1機で1部隊を相手取れる機体ではある。そんな物に乗っているのは当然エース級のパイロットであり、多くは赤服を着るパイロットとなる。
 これに対して劾とカナードは持ち前の技量を生かしてこの性能に勝る敵を見事に押さえ込んで見せた。ブルーフレームはその特徴的な近接戦闘での運動性能の高さを生かした接近戦でフリーダムの砲力を封じる手に出て、ハイペリオンは光波防御帯を用いた防御力の高さを生かしてジャスティスを狙った。
 だが、2機がどれだけ頑張ってもそれ以外で敗北を重ねてはどうにもならなかった。劾とカナードが核動力MSを1機ずつ押さえ込めたとしても、それ以外の場所ではジャスティスに切り捨てられ、フリーダムの砲撃に撃ち抜かれて次々に落とされていく。こうなっては2機がどれだけ強くても戦線を維持する事は出来ず、2人は何時の間にか自分たちが孤立している事にようやく気付いた。

「くそっ、この俺がこんな所で!」

 カナードが不甲斐ない僚機たちを罵るが、そんな事をしても劣勢が覆る訳ではない。そのカナードに劾が退くように言った。

「いったん退くぞ、ここはもう限界だ」
「言われなくても分かってる!」

 カナードは苛立ち、劾を怒鳴りつけるようにして言い返して機体を翻した。その後ろを守るようにして劾も後退を始めたが、劾は機体の状況を見て苦々しい物を感じていた。数機のフリーダムと交戦したブルーフレームはガタガタになっていたのだ。

「核動力MSか。やはりパワーが違いすぎる、接近戦は分が悪すぎるか」

 フリーダムとブルーフレームでは機体の世代hが1世代違うので性能差が出るのは仕方が無いのだが、とりわけパワー差が凄まじかった。核動力によって膨大なエネルギーを使うことが出来る核動力MSは多数の武器を同時にドライブできるという利点以外に、機体システムそのものにも強力な物を組み込む事が出来る。それがブルーフレームとの間に大きすぎるパワー差を設けてしまったのだ。
 劾はその技量と戦闘経験で性能の差を埋めて見せたが、それは所詮小手先の技によるこざかしいと称される類の手であり、薄氷を踏むような均衡であったと言える。機体の性能差というのは単純にして絶対の力であり、これを覆すのは容易ではない。言い換えるならば劾ほどの手練れであっても対等にしか持ち込めないほどフリーダムやジャスティスは強いのだ。





 第1波は後退した敵MSを追撃したが、艦隊に少し先行する形でメンデルの宙域に侵入していき、そこで早くも手厚い歓迎を受けることとなった。デブリに混じって設置されていた大西洋連邦製の自動攻撃トラップや機動機雷、防衛衛星などが接近してきたクルーゼ艦隊のMS隊に向けてレーザーを放ったり接近してきたり、リニアガンやミサイルを浴びせてきたのである。
 この歓迎を受けたMS隊は個々の判断で回避運動に入ったり迎撃をしたりしながらトラップ群を抜けて行こうとする。その先頭にたつのはトラップを意に介さずに進んでいるユーレクのゲイツRで、目に付いた機雷や砲台を重突撃機銃で手当たり次第に潰しながら進んでいる。その威力はダコスタが心血を注いで作り上げた防衛システムに大穴を開けてしまうほどであった。

「……思っていたより数が多いな。機雷封鎖や自動砲台は考えていたが、ここまで出てくると流石に面倒になる」

 ユーレクは執拗なトラップ群に些か辟易しながら重突撃機銃を放っていた。その高度な空間認識能力によって索敵システムに頼らずともある程度周辺を知覚する事が出来るユーレクにとって、機雷や砲台は恐れるような相手ではなかったがやはり面倒な相手ではあった。
 このユーレクの後に続いてトラップ群を避ける事に成功したMS隊の一部は防衛システムを突破してメンデルの眼前に躍り出る事に成功し、これを見たダコスタは旗艦であるナスカ級のヴェニスからこの様子を見ていて、その出鱈目な強さに目を剥いていた。

「馬鹿な、アレだけのトラップが役に立たない!?」

 勿論アレだけで防ぎきれるとは考えていなかったが、もう少し持ち堪えてくれると思っていたのだ。時間を稼げればロウがメンデルから十分に離れて、艦隊に離脱を許可できるのに。とにかく今はラクスを逃がす為に時間を稼ぎ出す事だ。
 トラップ群を突破したザフトMS隊はメンデル正面に展開していたラクス軍の艦隊へと襲い掛かった。表向きには海賊の根拠地だと説明されていたこのメンデルだが、出てきた敵の動きや編成を見たパイロットたちはすぐにおかしさを感じてしまった。その装備は統一感があり、その動きは明らかに訓練された物だと思わせる。そう、こいつらは海賊ではなくプロなのだ。

「これが海賊だと、クルーゼの奴、何を隠している?」

 左右から押し込むようにして迫る2機のストライクダガーを見たユーレクはクルーゼが自分を騙した事に気付いていた。海賊がどうしてこんな連携をみせるのだ。これは素人ではなく、訓練を積んだプロの軍人の動きだ。
 だが、それはユーレクの相手が務まるレベルではなかった。ストライクダガーは同時に仕掛けてきたのだが、ユーレクのゲイツはその最初の一撃を回避して狙い易かった右側のダガーを重突撃機銃で撃破し、もう一方は逃げていたのを見て無視した。どうせ獲物はまだまだ居るのだから。




 ユーレクが切り開いた防衛システムの穴を通るようにしてクルーゼは艦隊を前進させてきた。その回廊めがけてラクス軍の砲火が集中され、先頭を行くローラシア級の1隻が艦首方向に10を越す直撃を受けてあっという間に爆散してしまう。これを受けて後続のローラシア級が慌てて回避運動に入り、機雷に触れて側面に大穴を開けられてしまう。
 だが後続艦は怯まずに直進し、無傷では済まなかったもののメンデルの正面に展開する事が出来た。レールガンとビームの応酬が始まり、アンチビーム爆雷がビームを減衰して無効化するというオーソドックスな戦いが開始される。周囲を機雷源やトラップ群で囲っているこの戦場では高速を生かして駆け回ることも陣形を左右に広げる事も出来ず、密集した状態で真っ向から撃ちあうという文字通りの殴り合いが発生した。ダコスタが作り上げた防御システムはクルーゼの動きを妨害するという役目は果たしてくれたのだ。
 カリオペの艦橋からこの状況を面白そうに見ていたクルーゼは、敵の用意周到さに素直に感心していた。

「中々やるな、これだけ周到に防御を固めているとなると些か厄介か。ミーティアは出せそうか、アンテラ?」
「出せない事はありませんが、やはり行動の自由が制限されます。ミーティアやヴェルヌは加速性能に優れる分小回りが利きませんから、下手をすれば機雷に触れて終わりです。あれは動く弾薬庫ですから1発貰えば誘爆しますよ。元々中距離からの掃射を戦法としますから」
「ふむ、では無理をさせず、勝負する時期が来るまで温存するか。よし、エターナル改2隻は後方に待機、MS隊による近接戦闘で敵の数を減らす。私も出るぞアンテラ」
「はっ、お供します」
「後の指揮はロナルドに任せる、無理をせず艦の保全に努めろ。分かってると思うが、そろそろ来る筈の友軍を見間違えるな」

 艦長に指示を出して、クルーゼとアンテラも格納庫に向かった。カリオペにはクルーゼのプロヴィデンスとアンテラのジャスティスが搭載されており、出撃準備の状態で待機している。このプロヴィデンスはザフトが開発した空間認識能力保持者による無線操作による遠隔砲撃端末を装備したMSで、それまでのザフトMSとは全く異なった外見を持っているのが特徴だ。欠点はその特殊性で、殆どクルーゼの専用機と化している。何しろ100億はいるナチュラルでも空間認識能力保持者は少ないのだ。コーディネイターでは当然その数は更に少なくなり、絶望的な状況である。せっかく作ったのに宝の持ち腐れとなり、プロヴィデンスは試作機が1機で増加型の予定はない。
 このプロヴィデンスのコクピットに何時ものように軍服姿で乗り込んだクルーゼは機体を起動しながら少し真面目な顔で呟いた。

「問題は、この私にムゥほどの素養があるかどうかだな」

 プロヴィデンスの遠隔攻撃端末、ドラグーンは操作が難しい厄介な兵器だ。それだけに扱うには高度な空間認識能力が必要であり、自分にそれだけの才能があるかどうかクルーゼは少し疑っている。

「まあ良い、どうせ今回はテストだからな。では出るぞ!」

 少し考えた後で何時もの不敵な笑みを浮かべ、クルーゼはプロヴィデンスを発進させた。それに続いてアンテラのジャスティスも出て行く。そして周囲の艦から発進してきたMSがクルーゼの周囲に集まって編隊を組み上げていく。その速さが彼らの訓練度の高さを示していた。




「プレア、背後に回りこむんだ!」
「は、はい」

 1機の試作ザクを2機のゲイツが懸命に押さえ込もうとしている。それはジャン・キャリーとプレアのゲイツであった。彼らはそれなりに評価しうる技量を持つパイロットの筈であったが、試作ザクを前にしては圧倒されかけていた。このザクを駆るのはガザートで、更に2機のザクウォーリアを従えていた。このザクウォーリア2機のうち1機はプレアのエクステンショナル・アレスターに仕留められていたのだが、もう1機はまだ頑張っている。
 しかし、この2人も長くは戦えなかった。戦いは劣勢に傾いており、すぐに戦闘継続が不可能になってしまった。敵は増える一方なのに、味方の援護は全く無かったのだから。



 ラクス軍のMS隊は最初こそ拮抗した勝負をしていたものの、短時間でそれは劣勢から壊走へと転落しようとしていた。全体のMSの性能とパイロットの技量、そして個々の現場指揮官たちの能力で劣っていた為だが、一部の化け物じみたMSに数をすり減らされた事が響いていた。
 ユーレクのゲイツ、ガザートの試作ザク、アンテラのジャスティス、そしてクルーゼのプロヴィデンスが戦場を所狭しと暴れまわり、ラクス軍のストライクダガーやゲイツ、レイスタを次々に仕留めていたのだ。
 これに対抗するのはラクス軍の誇る3人のエース、ヒルダとマーズ、ヘルベルトの試作ザクと劾のブルーフレームG、そしてカナードのハイペリオンとジャンとプレアの駆るゲイツだ。
 だが、彼らはザフト側のエースたちに対して劣勢を強いられていた。機体性能もさることながら、技量にかなりの差をつけられていたのがその敗因と言える。劾やカナードなどは際立った技量を持っているのだが相手がユーレクとなると流石に苦戦を免れない。ブルーフレームやハイペリオンはゲイツRより高性能な機体なのだが2機がかりでもゲイツRを止められないでいたのだ。

「俺よりも反応が速いか、同じ戦闘用コーディネイターか?」

 メンデルで戦闘用に作られた自分以上の反応速度を持つ人間が存在するとは思えないのだが、戦闘用コーディネイターは自分だけではない。同じメンデルの生き残りか、あるいは話に聞くプラントで作られたという後継型なのか。しかも速いだけでなく上手い。恐ろしく実戦慣れしているようで無駄を感じさせない動きをしている。
 ブルーフレームの性能を生かして小刻みのフットワークを続けてゲイツRの先を行こうとするのだが、結果的に劾はゲイツRに1歩先を押さえられてしまい、主導権を得られずにいる。機動性は間違いなくブルーフレームが上なので、これはゲイツRのパイロットの先読みが劾を上回っている事を示している。
 高い機動性を見せ付けて時折軌道を交差させながらぶつかる2機のMS。それに僅かに距離を取って追随するのがカナードのハイペリオンだ。カナードは仕掛けるタイミングを伺って半歩離れていたのだが、そのタイミングを見出せずに苛立っていた。

「チィ、傭兵が粘ってくれるじゃないか!」

 カナードはブルーフレームが叩かれた際にゲイツRが見せるだろう隙を待っていたのだが、劾が思っていたよりも頑張るのでだんだん怒りで頭に血が上ってきている。カナードは腕は良いのだがメンタル面で著しく問題を抱えているのだ。
 しかし、そんなカナードの元にオリテュギアから通信が届いた。

「カナード、状況は加速度的にこちらに不利になっています。これ以上留まれば包囲されて逃げられなくなります」
「もうか、ラクス軍は威勢だけか!?」
「それもありますが、ザフトの戦力が想像以上でした。退路を断たれる前にオルテュギアは後退します」
「……分かった、好きにしろ。俺はもう少しやらせてもらうぞ!」
「構いませんが、収容限界点に達するまでには戻ってください」

 メリオルはそう言って通信を切り、オルテュギアを戦線から離脱させていく。ラクス軍に属する者はこの防衛システムの抜け道を知っていたので、オルテュギアは悠々と戦場を離脱する事に成功する。
 そしてこのオルテュギアの脱出がラクス軍の崩壊のきっかけとなった。既に負けを見越した各部隊は独自の判断で戦闘を続けるか戦線離脱するかを決断しようとしていたのだが、オルテュギアの逃亡を見て離脱する者が続出したのである。元々傭兵を中心とした戦力であり、戦いが不利に傾けば手を引くものが出ることは仕方の無い事ではある。
 そしてその中でも最も大規模だったのは、東アジア共和国艦隊の離脱だったろう。李提督率いる16隻の艦隊はそれまでラクス軍の主力として戦い続けていたのだが、これ以上交戦しても敗北は免れないと悟ると一斉に戦場からの脱出を始めたのだ。

「ラクス・クラインと心中するつもりはない!」

 それが李提督の判断だった。命令を受けた東アジア共和国艦隊は一斉に戦場を離脱しにかかり、他のラクス軍艦艇の乗組員を唖然とさせることになる。

「おい、ちょっと待てよ!?」
「自分たちだけ助かろうってのか、卑怯者が!」

 ラクス軍の兵士たちは逃亡する東アジア艦隊を見て罵声を浴びせたが、すぐにそんな暇は無くなってしまった。東アジア艦隊が抜けたという事はラクス軍の戦力が半減したということであり、それはそのままそれまでの均衡が崩壊した事を意味する。残っているのは信用を大事にするプロ意識を持った傭兵とラクスの理想に共鳴した兵士たちだけで、皮肉にも彼らはここに踏み止まる事によって逃げ出した連中の逃亡を助けるという形になっていた。


 

 この逃亡を見たロナルド艦長は事態をクルーゼに報告したが、これを聞かされたクルーゼは別に焦る事も無く、ミーティアとヴェルヌを外洋で発進させ、追撃させろと指示した。だが、それだけでは逃げられてしまうのではないかと問うロナルドに、クルーゼはそろそろ応援が来る事だと答えた。

「心配するな、そろそろ用意していた部隊が到着する。逃がしはせんさ」
「……ザルクの部隊がですか?」
「そういうことだ」

 そう答えて通信を切るクルーゼ。白濁した通信モニターを見ながらロナルドは「なるほどね」と呟き、4機のMAを出撃させるべくジャスティス4機を呼び戻し、護衛と共にメンデル宙域の外へと離脱していった。
 だが、結局彼らの出番は無かった。彼らがミーティアやヴェルヌを出撃させられる開けた場所に出た頃には、東アジア艦隊は粗方叩かれていたのだ。


 敵艦隊のおよそ半数が逃げ出したのを見たクルーゼは流石に唖然とした。クルーゼもラクス派の士気の高さは良く知っており、メンデルを巡る戦いでは死に物狂いの抵抗を見せるか、最初から戦わずにここを放棄するかのどちらかだと考えていた。だから迎撃を受けた時には必至の抵抗を受けると考え、それなりの損害が出ることを覚悟していたのだが、結果はこの有様だ。

「思っていたのとは随分違うな。ここまで脆いとは思わなかった」
「所詮は烏合の衆、という事でしょう。これならすぐにケリが付きそうですね」

 クルーゼのプロヴィデンスがドラグーンを放って補足している敵機を手当たり次第に砲撃していく。同時に複数の目標を攻撃可能という点ではこれは現用MSとしては頂点に位置するに違いない。
 ただ、ドラグーンは相手がそれなりの凄腕だと効果を著しく減じる兵器でもある。雑魚を掃除する目的ならあっという間に数を磨り減らせるのだが、ドラグーンの動きは単調でビームの射程も短く、単体ではMSやMAとは比べようも無いほど弱い兵器だ。これでは相手が劾やカナードのような凄腕には動きを読まれ易くなり、牽制以上には使えなくなってしまう。
 これらの事をクルーゼは実戦の中で学んでいた。プロヴィデンスは確かに優秀な機体だが、多対1戦闘には効果的でも1対1には向かないMSだという事も理解できたのである。

「まあ良い、これで予定通りに進む事になる。予定通りなのだから不満に感じることは贅沢というものだろう」
「クルーゼ、少々油断のし過ぎですよ!」

 多少不満そうなクルーゼの呟きにアンテラが鋭くつっこみを入れ、ビームライフルを天頂方向に向けて連射した。其方から3機の試作ザクが迫ってきていたのだ。ゲイツやゲイツRがこれを阻止しようと次々に向かって行ったのだが、逆に返り討ちにあって次々に落とされている。これはヒルダとマーズ、ヘルベルトだった。

「お前ら、あの新型が指揮官機だ。あいつを落とすよ!」
「ジャスティスが護衛についているようだが、大丈夫か?」
「ヘルベルトは心配しすぎなんだよ!」

 ヒルダとマーズのザクが勇んで突っ込み、ヘルベルトが一歩遅れて援護の位置につける。この3機は連係プレーで戦う事を得意とするが、今回もそれで挑んだ。だが、その眼前をアンテラのジャスティスが遮ってビームブーメランを投げてきた。左右から弧を描いて襲い掛かってくるブーメランを見たヒルダが舌打ちして回避に入るが、回避しようと機体を跳ねさせた所をビームライフルで狙われた。

「反応は良し、ですが私の相手をするには経験が不足しているようですね。こちらの動きに気付いていない」

 ヒルダのザクを狙ってビームライフルを5発発射し、うち2発を命中させて左足を完全に吹き飛ばしてしまった。全弾当てるつもりだったアンテラはその反応の速さに少し感心している。
 足を吹き飛ばされて弾かれるように軌道をそらされてしまったヒルダに替わってマーズとヘルベルトが突っ込み、アンテラのジャスティスに挑んできた。これを見たアンテラはクルーゼに下がるように言う。

「クルーゼ、あなたは後退して下さい。プロヴィデンスは接近戦には向きません」
「そうだな、そうさせて貰おう。だが、1人で大丈夫かね?」
「ご安心を、地球で相手にしたクライシスに比べれば大した事はありません」

 アルフレットと比較するのは間違いのような気もするが、アンテラはこの3機のザクをさほど脅威とは感じていなかった。それに元々ジャスティスの方が試作ザクより強い。アンテラはビームサーベルを抜くと、まだ向かってくる2機のザクを仕留める為に接近戦を仕掛けた。これを見た2機のザクが左右に散ってビーム突撃銃を向けようとしたが、左に動いたマーズにヒルダの声が飛んだ。

「マーズ、左に避けろ!」
「なにっ!?」

 その声に弾かれるように反応したマーズが機体を左に逸らした。それに半瞬遅れて四方八方から無数のビームガそれまで居た場所を貫いていった。何時の間にか10を超すドラグーンに囲まれていたのだ。そしてマーズが抜けた為にヘルベルトが孤立し、彼は必至になってアンテラのジャスティスの攻撃を耐え凌ぐ羽目になる。彼女と戦って持ち堪えられる彼の技量は流石と言うべきだろうか。
苦戦するヘルベルトを助けようとマーズが駆けつけようとしたが、それはプロヴィデンスに阻まれた。クルーゼも超一流のパイロットであり、マーズ1人では手に余った。ヒルダのザクは被弾して十分な援護が出来ないでいる。更に悪い事に動きの鈍いヒルダを狙って他のゲイツやジンHMが集まってきた。これを見たヒルダが2人に撤退を促す。

「お前たち、これ以上は無理だ、撤退するよ!」
「ちっ、仕方がないか!」
「了解した!」

 ヘルベルトがトマホークを投げつけてジャスティスを少しだけ離し、レールガンを撃ちまくって距離を取る。だが、マーズは彼ほど上手くはいかなかった。プロヴィデンスはドラグーンで四方からビームを浴びせかけ、彼に回避運動を強要し続けたのだ。これを全て回避し続けるのは不可能で、僅かな遅れが機体を抉り、確実に戦闘力を削いでいった。
 そして更に悪い事に、逃げたヘルベルトのザクを諦めたアンテラがマーズのザクに狙いをつけてしまった。ドラグーンの包囲の中で動けなくなっていたマーズのザクめがけてビームが続けて放たれ、2発がシールドを直撃する。そこに更に投げられたビームブーメランが襲ってきて頭部を切り取られ、距離を詰めてきたジャスティスによって胴体にビームサーベルを付きこまれて、爆発四散してしまった。




 脱出を試みた東アジア艦隊はメンデル宙域からの脱出には成功したのだが、外洋に出た時点で周囲から現れた10隻ほどの新たなザフト艦隊に襲われることとなった。これを見た李提督は中央突破を試みたのだが、前に出したMS隊は迎撃に出てきたジンHMやゲイツ、そして何故か連合が装備しているデュエルやバスター、といったGシリーズ。105ダガーやバスターダガーといった主力級のダガー型に圧倒されてしまった。
 相手は余程の手練れのようで、出撃させたストライクダガー隊は何もしないうちに蹴散らされ、その数を瞬く間にすり減らして李提督を唖然とさせてしまった。

「こ、こんな事が……コーディネイターが強いとは言っても、こんな馬鹿なことが……」
「提督、前衛のMS隊、全機反応消失!」
「ぜ、全艦散開、自己の判断で戦場を脱出して月に向かえ!」

 ここで集団を組んでいては脱出出来なくなる。そうなる前に散開し、バラバラに逃げる事にした。そうすれば何隻かは包囲を抜けて脱出できると考えたのだ。しかし、今度はメンデル方向から4機の大型MAが突っ込んできた。それはラクス軍のデータからミーティアとヴェルヌ35Aであると分かり、誰もが蒼白になってしまった。ミーティアの攻撃力はザフトによる連合のステーション強襲で判明しており、1機で1個戦隊に相当するということが想定されているからだ。
 もう恥も外聞も無く逃げ散っていく東アジア艦隊。それに対してザフト艦隊とミーティア、ヴェルヌは1隻ずつ潰していくように動き、MSに集られて滅多撃ちにされる駆逐艦、ミーティアのビームサーベルで両断される戦艦、ミサイルのシャワーを浴びて撃破されるMS部隊が続出し、脱出できたのは僅かな数のMSのみで艦艇は全滅してしまった。



 この部隊に狙われたのは東アジア艦隊だけではなく、メンデルを脱出しようとした他の艦艇やMSも餌食となっている。傭兵やジャンク屋のMSや船も襲われており、一部の気の利いた者以外は悉くが餌食となったと言える。クルーゼは最初からザルクの部隊を包囲する為の伏兵として使うつもりだったのだ。





 もはやこれ以上の戦闘継続は不可能となっていた。ダコスタはヴェニスから懸命に指揮を取り続けていたが、逃亡者が続出して戦線の維持すら困難という有様になっている。だが、ダコスタは満足そうであった。これだけ時間を稼げば、リ・ホームは安全圏に脱出できただろう。これまでダコスタは旗艦にラクスが乗っているという前提で指揮をしており、彼女が脱出した事を知っているのは艦橋に居る数人のクルーだけである。
 ダコスタはラクスを逃がす為、ただそれだけの為にこの戦いを継続していたのだ。彼女の為と信じて多くの兵士が散っていった事にはダコスタも胸を痛めたが、これが最善の策だと自分の言い聞かせて指揮を続けたのだ。



 ダコスタが脱出を勧めた時、当然の事ながらラクスはそれを拒絶した。ここで死ぬ訳にはいかないと分かってはいたのだが、同志を見捨てて自分だけ逃げるという行為には流石に嫌悪感を抱いたのだ。彼女はダコスタがここは生き延びて捲土重来を期してくれと訴えても頑として聞かず、ダコスタの震源を退けてしまった。
 このラクスの頑なな態度にダコスタはため息をつき、そしてあらかじめ用意していた圧力で注入する無針注射器をラクスの首にそっと押し当てて素早く薬剤を注入してしまった。これを受けたラクスはなにをするのかと怒ろうとしたのだが、すぐに強烈な眠気に襲われてしまった。

「ダコスタ、さん……何を……」
「申し訳ありませんラクス様。ですが、我々は貴女を失う訳にはいかないのです。貴女を失えば、これまでやってきたことが全て無駄になってしまいます」

 ダコスタが注入したのは即効性のある強力な睡眠薬だった。それで強制的に眠らされてしまったラクスを用意していた貨物用の箱に入れ、呼びつけたプロフェッサーに台車ごと渡してしまった。受け取ったプロフェッサーは仕方無さそうにそれを受け取ったものの、迷惑そうな顔でダコスタに文句を言ってきた。

「あのね、こういう面倒な仕事は受けたくないんだけど?」
「ロウにも言われましたよ」
「……まっ、ロウが受けたんなら仕方が無いんだけど、私はこういうのは御免だわ。こういう仕事は大抵後で碌な事にならないのよ」
「前金ははずんだんだ、頼みますよ」

 プロフェッサーの愚痴にダコスタが苦笑いを浮かべる。ロウは何かと厄介ごとに首を突っ込むジャンク屋で、それが時としてチームを危険に晒す事もある。だがその殆どはプロフェッサーにとって退屈を紛らわす程度にしか感じていなかったが、今回のラクスを預かるという仕事はそういったレベルを超えた物だ。ラクスを匿うという事はプラントを完全に敵に回すという事であり、これから仕事がやり難くなる事は間違いない。
 だが、それに対してダコスタは大丈夫だと答えていた。多分追われる事は無いと。それが何を意味するのかプロフェッサーは察したが、ダコスタを止める事はしなかった。止める事など出来ない問題だったからだ。



 ラクスを逃がし、この艦にラクスがいると装ったダコスタはいよいよ最後の時が来たと悟った。これ以上の交戦を断念し、生き残っている全軍に戦線離脱を許可する。それを受けてまだ生きていた艦艇やMSが戦場から離れていこうとする中で、ヴェニスは最後までここに留まって味方の撤退を援護していた。
 ダコスタは艦橋のクルーに対して頭を下げて謝り、ヴェニスはここでラクス様を乗せたまま沈まなくてはいけないと言った。

「敵はこの艦にラクス様が乗っていると思っているはずだ。だからこの艦が沈めば、敵はラクス様が死んだと判断するだろう。そうすればラクス様の暫くの安全が確保できる」

 このダコスタの言葉に艦橋のクルーたちは頷いた。彼らは皆ラクスに忠誠を誓う狂信的な人間で、ラクスの為に命を投げ出す覚悟が出来ていたのだ。1隻でその場に留まり、味方の脱出を援護するヴェニスに当然の事ながらクルーゼ艦隊の砲火は集中され、たちまち何発もの直撃弾が艦を激しく震わせた。その周囲にはラクスを慕うパイロットの駆るMSや艦艇が集まってきて援護しようとするが、これはダコスタが叱り付けて脱出させる。その中にはボロボロになりながらもアンテラとクルーゼの手を逃れて見せたヒルダとヘルベルトのザクの姿もある。
 ヒルダたちは最後まで抵抗を見せたのだが、ダコスタから僅かに真相を聞かされて渋々納得し、デブリに紛れるようにして戦場を脱出していった。どのみちもう戦闘力を残してはおらず、戦っても撃破されるだけだったのだ。
 そしてヒルダたちが脱出した直後に破局が訪れた。直撃弾がヴェニスの艦橋近くを襲い、艦橋を吹き飛ばしてしまったのだ。この爆発にダコスタも飲まれ、ダコスタの後を追うようにしてヴェニスも爆発の光に飲まれていく。ダコスタの説得に従わなかった他のMSや艦艇も大した差も無く撃破され、メンデルに隠れていたラクス軍は全てが戦死するか脱出してしまった。


 クルーゼはヴェニスにラクス・クラインの副官であるマーティン・ダコスタが居た事を通信傍受によって確認しており、これには捕虜から得た情報でラクスが乗っていたらしいと判断された。ラクスを殺害した事にクルーゼは大いに満足し、全軍をプラントへと帰還させた。残敵の掃討をしなくても良いのかとアンテラが聞いたが、求心力であるラクス・クラインを失えばラクス軍など胡散霧消してしまうと彼は判断したのだ。

 こうしてメンデルを巡る戦いは終結した。この後、クルーゼはザルクの部隊にメンデルに遺棄された物資の確保を命じている。ラクスが集めた物資を自分の為に有りがたく使わせてもらうつもりなのだ。



 そしてその頃、、宇宙に上がるべくアークエンジェルは暢気に太平洋をパナマ基地目指して航行していた。彼らは味方の絶対制空権下を船旅気分で進み、平和な航海を満喫していたりする。いずれまた戦場に立つのだから、今くらいは楽しんでもいいだろうと思いながら。
 だが、彼らの次の戦いは思いのほか早くやってきた。




後書き

ジム改 ラクス軍が事実上消滅しました。
カガリ 頑張った、と言えるのかな?
ジム改 戦力から見ればよく健闘したと言える。まあ烏合の衆だったってことだ。
カガリ 主力が傭兵や他国の支援部隊じゃなあ。
ジム改 数では互角だったんだけどねえ。まあ装備も圧倒されてたし。
カガリ 劾やカナードはユーレクより弱かったのか?
ジム改 アレに勝てるのは種割れ+主人公補正が入った時のキラか、余程MSに性能差がある時だけだ。
カガリ ダコスタも死んで、ラクスは完全に1人だな。これからどうするんだろ。
ジム改 とりあえずプラントに帰るしかないな、他に行くとこも無いし。
カガリ そして次回は地球でキラたちか。
ジム改 パナマ防衛戦だからな。久々にアークエンジェル組オンリーだ。
カガリ 単艦行動も久しぶりだよなあ。
ジム改 カガリの出番は何時になるやら。
カガリ …………。
ジム改 あ、いじけた。それでは次回、パナマ基地に迫る南アメリカ軍。ソードカラミティと試作ザクを先頭に地上から押し上げてくる敵を前に兵力を引き抜かれていたパナマ基地は苦戦を強いられる。スティングのマローダーが抵抗を続けるが、海から止めを刺すべくジェーンのフォビドゥンブルー率いるMS隊が上陸してくる。次回「南米の英雄」でお会いしましょう。


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