「 筆と書 」

 三.西暦八〇〇年頃と現在の筆製法の相違点とは(仮説)

 西暦八〇〇年頃の筆はどのような筆で、どのような製法を用いていたのであろうか。 色々と調べてみたが、資料があまりにも少ないため、正倉院宝庫に保管されている、筆の写真などから推察する事しかできない。 現在の筆が水筆といわれるのは、その製造過程で水をつけて作るためであるという説が有力であると思うが、 一方では、水洗いできるためである。という説もある。

 現在の筆の製造方法や、これまでに説明した豊橋筆の歴史から、 当時の筆と現在の筆の相違点は以下の三点であると推察することができる。


 一つ目は、昔は製造過程で水をつけなかったゆえに、練りまぜはなかった。


 二つ目は、製造方法は、※6コマ立て製法であった。


 三つ目は、筆は※7紙巻筆であった。


 では、当時の技術水準は、どの程度のものであったのだろうか。 それを知るため、西暦八〇〇年頃の経済および、生産体制から紐解くことにした。



※6  コマ立て製法とは、乾燥した毛の芯立てで、全ての毛を先に揃える製法。 特に細い面相や真書などでは、現在でも日本で数名この製法で筆を作っている。 最も古い製法と考えられている。

※7  コマ立て製法の場合、全ての毛の毛先を揃えた芯毛だけの為、腰毛のかわりに 紙を巻いた。芯巻筆とも言われる。豊橋の場合は明治四年までは紙巻筆であった。









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