「 筆と書 」

 四.古典時代の経済状況

 空海の生きていた西暦八〇〇年頃、日本は律令社会と呼ばれ、世界史的に見れば古代奴隷制社会にあたる。 だが、経済の支配的形態をとるほど多数の奴隷はいなかったので、古代ローマ型のような奴隷制社会とは異なる。 しかし、農作物の生産手段である土地、またその官僚機構からして、 アジア的形態のもとでの、一般的奴隷制社会と呼ぶことができると思う。

 この場合、農業生産は停滞し、合わせて筆の製造技術においても向上は難しいと考えられるのであるが、 西暦九〇〇年代の仮名の書を見ると技術的な面が、かなり良くなっている。 よって、単純に一般的奴隷制社会と呼ぶことには疑問を感じるが、ここで経済論議をするつもりはなく、 ある程度の経済状況が理解できたため、次に進むことにする。









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