真空管式カーオーディオ計画 第2号(2011.4.24)(2011.12.25)追記
その1 電源の製作

 昨年、2台目のいすゞピアッツァを購入して以来、2台目用の真空管式カーオーディオの計画を進めていました。前回の経験を生かし、以下の方針を立てました。
1.車内の4か所のスピーカーに対応して4チャンネル分パワーアンプを作る。
2.運転席側にはプリアンプのみ設置し、電源部とパワーアンプは後部座席後ろに設置する。
 

使用する真空管と回路構成
 前回と同じでは面白くないので、出力段は安価に購入できた6CW5の差動プッシュプルとし、ドライブは旋回と同じ5670とします。プリアンプにも5670を使用してみようと思います。6CW5を差動プッシュプルで使用する場合のプレート電流を47.5mA、プレート電圧を185Vとし、出力約4.5W/チャンネルを目指します。全部で18Wになるはずなので、現状(7W×2(に比較して遜色ありません。プレートおよび第2グリッドの損失の合計は8.8Wになりますので、定格の13.3Wに比較して十分に余裕があります。過酷な車内での使用を考え十分な余裕を取りました。

計画中の回路図(まだ製作途中ですので、変更の可能性があります)
パワーアンプ  プリアンプ


6CW5ロードライン

電源部の試行錯誤と回路の決定

 電源については、さまざまな失敗を重ねた結果、バッテリー電圧の変動に対してAC1100V出力電圧の変動が少ない正弦波出力のDC−ACインバータ(DENRYO SK200)を使用し、絶縁トランスを経て倍電圧整流でB電圧DC200Vを得る方式に落ち着きました。失敗の数々は、こちら と こちら をご覧ください。

 購入した正弦波出力のDC-ACインバータは、値段が高いだけあって、下図の通り、供給電圧変動に対するB電圧の変動がほとんどありませんでした。これならば、B電源には安定化回路は必要ないと判断しました。ただし、無負荷の場合には、B電圧は250V以上に上昇してしまうため、6CW5グリッドにつながるカップリングコンデンサと一部のB電源のコンデンサの耐圧を250Vのものから350Vのものに交換する必要が生じてしまいました。



 DENRYO SK200にはリモート端子により電源のON-OFFができるようになっています。これを利用し、ディレイ回路を通してリモート端子をコントロールし、車エンジンをかけてから数秒後にインバータがONになるようにしました。これは、実測によると負荷がかかった状態(200V*400mA=80W)では、SK200の入力電圧が12Vを下回るとシャットダウンすることがわかったため、この対応としてエンジンが回り十分にバッテリ電圧が上昇した後に負荷がかかるようにするためです。ヒータ電源用のリレーを介してインバータの電源をON-OFFすることも可能ですが、大電流が流れるため、インバータへの供給回路をなべく短くし、抵抗を下げる必要があるため、リレーを介さないでON-OFFできるリモート端子を利用した方式を採用しました。


電源部は一応完成

 正弦波DC-ACインバータの電圧変動が少ないことが分かったので、ノイズ軽減のためB電源と同様にC電源もスイッチング電源をやめ、小型のトランスからAC12Vを得てマイナス電圧を得る方式に変更しました。
電源部回路図はこちら


電源部ケースにひと工夫


 電源部のケースは、前回と同じく既製品のアルミケースを2つ使用します。前回と異なる点は、蝶番を用いて上下のシャシを連結し、メンテナンス性を向上させたことです。現状の電源部は単純にアルミシャシを2段積み重ねたもので、メンテナンスの際、上下のシャシを重ねる際に配線を挟み込むなど面倒であったことを反省し、上下のユニットをつなぐ配線の取り回しも改良しました。
 また、ふたを開けなくても各部の電圧がチェックできる端子をシャシ前面に設けています。熱対策として12V用のDCファンを使用する計画でしたが、インバータが外付けとなったため、ファンは使用しないことにしました。ファンの丸穴は残して自然換気口としてあります。インバータが外に出た関係で、ケース内の空間には余裕ができました。


 以前作成したカーオーディオでは、電源部とアンプ部をつなぐケーブルの接続にはオクタルソケットとオクタルプラグを使用したたのですが、オクタルプラグにケーブルをはんだ付けする技術が未熟だったせいか、温度変化の大きくなる時期に必ずといっていいほど接触不良を起こした経験があります。そのため今回は自動車用のコネクタを使用しました。B電源には200Vがかかるので、耐圧が心配なのでB電圧周りはピンを一つ開けて配置しています。ケースからコードが出てきた先にコネクタがついているので、見た目はすっきりしませんが、信頼性を優先します。

電源部外観

上下のアルミケースは蝶番でつなげてメンテナンス性を向上
ヒータ突入電流の抑制 (2011.6.18)

 パワーアンプの配線が完了したので、電源部と接続してスイッチを入れると、12V10Aの容量しかない直流電源の上限を超える電流が流れるため、電源が落ちてしまうという問題が発生しました。実際には車載バッテリーを使用するので、もっと電流が取れるはずですが、室内で試験ができないのは不都合です。原因は、ヒータが温まる前にはヒータの抵抗値が低いために、突入電流が流れることでした。対策として、下図のようにMOS FETを用いたタイマースイッチでヒータの突入電流を制限する回路をヒータ回路に追加しました。スイッチON直後は2Ωの抵抗がヒータと直列に挿入される形となり、電流を制限します。10秒ほどすると、FETがONの状態になり、2Ωの抵抗がショートされて通常の状態になる仕掛けです。500kの可変抵抗とアースの間にあるダイオードは電源をOFFにした際に220μのコンデンサを放電するためのもので、これにより、スイッチを切ってすぐに再度スイッチONしてもタイマーとしての機能を果たすことが可能です。

ヒータ突入電流抑制回路を過電圧保護回路に改造(2011.12.25)

 実際に車に載せてみると、バッテリーには電流の余裕があるので、上記の突入電流抑制回路は必要ないことが確認できました。一方、ヒータ用のスイッチングレギュレータは場合によってはショートモードで破損することがあり、出力に12V以上の電圧がかかる可能性があります。そのため、上記の電流制限回路を改造し、過電圧保護回路に変更しました。ツェナーダイオードとフォトカプラを用いた簡易な回路です。実験では供給電圧が8Vを超えるとFETがOFFの状態になり、出力電圧が0Vになりました。保護がかかる電圧が少し高いですが、ツェナーダイオードの電圧を低くすると、うまくOFFになってくれませんでしたので、これでOKとします。過去の経験から、このスイッチング電源が故障するときには出力電圧は0Vになるか12V以上になるかどちらかでしたので、スイッチングレギュレータ故障への対応としてはこれでも大丈夫です。

ヒータ回路のスイッチングノイズ抑制 (2011.6.18)

 ヒータ電源にスイッチング電源を用いているので、スイッチングノイズが発生します。ちょうど製作途中に善本さんのページにノイズ対策のレポートが掲載されたので、参考にさせていただき、上記の回路のように、10μHと1μFのOSコンでフィルタを構成しました。アナログオシロを用いてノイズ波形を観測してみたところ、下の画像の通りそれなりの効果をあげています。

フィルタなし 横軸5μS/div 縦軸5mV/div

フィルタあり 横軸5μS/div 縦軸5mV/div
その2 プリアンプの製作へ
その3 パワーアンプの製作へ
その4 組み付け編へ

トップページに戻る