シミュレーションと実際のアンプのデータとの比較

A. シミュレーションを実際の設計値で実施してみる
最終的に決定した数値に合わせて、シミュレーションをおこない、実際のアンプのデータと比較することで、このシミュレーションの有効性を検証したいと思います。対象とするのは、45シングルアンプです。回路図はこちら

1)各段の近似式を得る
「45シングルアンプの製作」設計編に大まかな説明がありますが、もう少し詳細に解説します。
1-1 初段の動作のシミュレーション
真空管:76
動作の基点 Eg=-4V
Ep=100V
Ip=4mA
負荷 RL=50KΩ(交流負荷45.45KΩ)
この条件で76のEp-Ip特性図にロードラインをこのようにひき、データを得ます。

ここで得られた各Egに対応するEpのデータから、こちらの手法を用いて近似関数を得ます。
76初段の場合以下のデータを得ました。(Eg0,Ep0は無信号時のEgおよびEp)
Eg-Eg0 Ep-Ep0
4 -47
0 0
-4 50
-8 93
-12 129.1
-16 164
結果のみを示しますが、得られた近似関数は以下の通りです。サンプルの点が少なかったので5次関数までの近似となってしまいました。


1-2 ドライブ段の動作シミュレーション
初段と同様に以下の動作点からデータを得ます。
真空管:76
動作の基点
Eg=-12V
Ep=220V
Ip=4mA
負荷 RL=20KΩ(交流負荷18.5KΩ)
これをもとに以下のグラフを作図し、データを得ました。

得られたデータは以下の通りでした。
Eg-Eg0 Ep-Ep0
12 -128.5
8 -82.5
4 -38.6
0 0
-4 32
-8 61
-12 74.1
初段と同様に近似関数を得ます。今回はサンプル数が多かったので6次関数を得ました。


1-3 出力段の動作シミュレーション
「45シングルアンプの製作(設計編)」にある通り、出力段45の動作条件は以下の通りです。
動作の基点 Eg0=-48.5V
Ep0=250V
Ip0=34mA
負荷 RL=3.5KΩ
これから得られるグラフは以下の通り。

得られたデータは以下の通りです。
Eg-Eg0 Ep-Ep0
48.5 -130
38.5 -100
28.5 -70
18.5 -46
8.5 -20
0 0
-11.5 28
-21.5 50
-31.5 70
-41.5 88
-51.5 100
同様にして、以下の近似関数を得ました。

2)各段の近似式からアンプ全体の近似式を得る
)で得た近似式を用い、こちらの手法を用いて、初段から順に出力の値をMS-Excelのリンク貼り付け機能を用いて次段の入力電圧に入力することで、アンプ全体での入力電圧と出力電圧の関係を近似した式を得ることができます。
下図は、実際の計算図表のコピーです。


結果としてアンプ全体で以下の近似式を得ました。まだこの時点では負帰還は考慮しておりません。

3)負帰還をかけた場合の近似式を得る

2)で得られた近似式に対し、この手法を用いて負帰還をかけた場合のアンプ全体の入力電圧と出力電圧の関係を表す近似式を得ます。
この場合、負帰還をどの程度かけるのかが問題になりますが、今回の検証では実際のアンプの利得の減少割合と同等の割合で利得が減少するような値を選んでt=0.00226としました(t:45の出力電圧(トランス1次側)に対する初段カソードに帰還される電圧の割合)
実際のアンプでの無帰還時の利得に対する負帰還をかけた場合の利得の割合は、0.64(-3.9dB)であったのに対して、シミュレーションでの同様の比率も0.64倍となっています。

B. 実際のアンプのデータとの比較
こちらをご覧ください


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